【世界初!】ブタの腎臓を生きた患者に移植成功 執刀医「将来は人工透析なくなる可能性」
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 研究グループの発表への受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: アメリカでは、2021年に脳死状態の患者にブタの腎臓を移植する試みがおこなわれた経緯がありますが、患者の回復を目指してブタの腎臓が移植されたのは今回の研究が世界初とのことです。 執刀医師らの見解では、「移植した腎臓が数年間機能する可能性がある」との考えを示しながらも、「動物臓器のヒトへの移植には未知な点が多いことも事実である」とコメントしています。 近年、臓器移植の需要は提供数を上回っています。特にアメリカでは毎日17人が臓器移植を待つ間に亡くなっており、腎臓が最も不足している臓器であると言われています。 アメリカの臓器移植ネットワークによると、昨年は約2万7000件の腎臓移植がおこなわれましたが、腎臓移植を希望する患者は約8万9000人だったようです。 動物の臓器をヒトに移植する異種移植は、安全性を担保したうえで臓器不足を解決する観点から重要なテーマであると考えます。 今回のアメリカでの移植成功体験によって、今後より多くの患者が移植を受けられる方法を探る上で、画期的な実績の1つとして貢献すると思います。
まとめ
アメリカのマサチューセッツ総合病院の研究グループは、「腎臓病の患者に遺伝子操作を行ったブタの腎臓を移植したところ、患者が順調に回復している」と世界で初めて発表しました。 日本でもブタの腎臓をサルに移植する研究が進んでおり、こうした取り組みがドナー不足問題の解決の糸口になることが期待されています。
【この記事の監修医師】 甲斐沼 孟 先生(上場企業産業医) 大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
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