【コラム】米3冠最終戦ベルモントS 今年も「リッジリング」がV
現地8日(土曜)に行われたG1ベルモントS(ダート2000メートル、サラトガ)は10頭立て8番人気の伏兵ドーノック(牡3、父グッドマジック)が10着に敗れたケンタッキーダービーから巻き返して優勝。昨年のケンタッキーダービーを制したメイジに続き、兄弟で3冠競走制覇を達成しました。 ドーノックは、これで8戦4勝、2着2回。3月のG2ファウンテンオブユースSを制した直後はダービーの有力候補として脚光を集めましたが、本番では不利な1番枠からの発走があだとなって、能力を発揮できず。勝ったミスティックダンに大きく離された着外に終わりました。 栗毛の全兄メイジよりひと回り大きな鹿毛のドーノックは生まれつき睾丸(こうがん)のひとつが体内にとどまる停留睾丸(陰睾)の馬。幼少時に運動能力に障害が見えたため、デビュー前に手術を受けて睾丸のひとつが除去(性別表記は牡)されています。 ベルモントSは昨年の優勝馬アルカンジェロ(父アロゲート)も同様の停留睾丸で生まれた馬でしたが、こちらは睾丸ひとつを体に残したままで、このような馬は英語ではRIDGLING=リッジリングと呼ばれて牡馬と区別(日本ではこのような表記がないため牡と表記)されています。 アルカンジェロは「真夏のダービー」の異名を取るG1トラヴァーズSも連勝、秋のBCクラシックは脚部不安で出走を回避して、そのまま引退。その後にエクリプス賞の最優秀3歳牡馬のタイトルを得て、現在はケンタッキーで人気種牡馬となっています。さらに記憶をたどれば92年のベルモントSとBCクラシックを制し、その年の年度代表馬に輝いて、米国種牡馬のトップ(03年と06年のチャンピオンサイアー)にまでなったエーピーインディも2頭と同じようなリッジリングの馬でした。 ドーノックにとって同じような身の上の先輩馬の活躍が、これからの励みとなりそうです。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)