セブンMBOに「伊藤忠が参画」の現実度と真意、争奪戦は早くもヤマ場で岡藤会長が語った腹の内
「そこで、われわれも協力させてほしいと言ってきた。なかなか門戸を開いてもらえなかったが、今ではやっと話を聞いてもらえるようになった」 伊藤忠とセブン&アイとの間には長い歴史がある。1973年、当時のイトーヨーカ堂が米国セブン‐イレブンの運営会社、サウスランドとライセンス契約を結ぶ際、橋渡し役となったのが伊藤忠米国法人のトップを務めた故J・W・チャイ元副会長だった。食品卸の伊藤忠食品は、セブンの創業当初から今に至るまで酒類を中心に取引をしている。
1998年に伊藤忠がファミリーマートの筆頭株主になると、一時関係は冷え込んだ。そこで、セブン&アイの鈴木敏文元会長との関係改善に乗り出したのが、2010年に社長になった岡藤会長だった。鈴木氏と岡藤会長はウマが合い、鈴木氏の応接室には岡藤氏が贈った置物が飾られていたという。 ■複雑な方程式を解く必要がある だが、今回のMBO参画について岡藤会長は「創業家などとのコンソーシアムには無理もある」と、その実現の難しさを示唆する。
事実、伊藤忠がセブン&アイに出資するにはいくつかの壁が待ち受ける。まずは独占禁止法の問題。伊藤忠は子会社にコンビニ2位のファミリーマートを持つ。2社の店舗数を合算すれば国内コンビニ市場の7割弱に及び、伊藤忠が支配株主になれば公正取引委員会から「待った」がかかる可能性もある。 伊藤忠にとってセブン&アイが持ち分法適用会社となる20%以上出資しなければメリットは薄れるが、過半数出資などセブンの支配株主となる意志はないとみられる。さらに、コンビニの商品価格はスーパーやドラッグストアなどほかの小売業態とも競合しており、セブンとファミマの2社だけの協力で価格を吊り上げることは困難だ。「伊藤忠の出資が独禁法違反と認定される可能性は低いだろう」(M&Aの専門家)。
むしろ困難なのは、伊藤忠グループ内での理解を得ることのほうだ。「岡藤会長の後継者」との下馬評もあるファミマの細見研介社長は、報道が出るまで今回の件で伊藤忠が参画を検討していると聞かされていなかった。 ファミマ社内では早くも「セブンに出資する代わりに、うちが売られるかもしれない」という不安の声が広がっている。長年競合関係にあった両チェーンのフランチャイズオーナーからの反発も避けられない。岡藤会長も、「出資するとなれば、複雑な方程式を解く必要がある」と語る。