H3ロケット“本格デビュー” 観測衛星だいち4号載せ、打ち上げ成功
観測幅4倍、被災地の緊急観測に威力
だいち4号は観測に電波を使うレーダー衛星で、2014年から運用中の「だいち2号」の後継機。JAXAと三菱電機が共同開発した。上空を飛びながら地表に電波を照射し、はね返ってきた電波を連続処理して信号を合成していく。この手法により、実物より大きな仮想アンテナの高解像度を実現する「合成開口レーダー」の仕組みを、2号に続き採用した。
周波数帯は、植生を透過し地表を捉えやすいLバンド。2号の分解能3メートルを維持しつつ、観測の幅を50キロから200キロにまで拡大しており、関東平野や九州の東西を一度に捉える。被災地の緊急状況把握や地殻変動などの観測で、強みを発揮する。船舶識別信号の受信機も搭載し、海の安全にも役立つ。海外の衛星と連携し、世界各地の大規模災害時に貢献する。
太陽電池パネルを展開した幅は約20メートル、重さ約2.8トン(燃料込み)。上空628キロをほぼ南北に周回し、97分で地球を1周する。設計上の寿命は7年。開発費は約320億円(地上システムを含む)、打ち上げ費用は非公表。 JAXAの有川善久プロジェクトマネージャは「元日の能登半島地震を受けた緊急観測では、奥能登の先端の地域を観測できなかった。仮に既に4号があったなら、半島を(一度に)もれなく観測できた。分解能と観測幅の両立は大変難しい。複数の場所からはね返ってきた電波を同時にデジタル処理する『デジタル・ビーム・フォーミング』技術を搭載した合成開口レーダー衛星は、世界初。早く実用に供して2号と連携させ、大災害に備えたい」と話している。
なおH3の1号機の失敗により喪失しただいち3号は、光学衛星。政府は代替機を開発せず、民間主体の小型光学衛星の連携や、レーザー光で立体観測をするライダー衛星により、観測体制を整える方針をまとめている。