「20年間自由なかった」 原告が初の会見で思い語る 牧場虐待訴訟
北海道恵庭市の遠藤牧場で数十年間、劣悪な環境で虐待されたなどとして、知的障害のある60代男性3人=いずれも道内在住=が牧場経営者と市に計約9400万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が18日、札幌地裁(布施雄士裁判長)であった。原告の1人が出廷して終了後に初めて記者会見し、「(裁判を)みんなに知ってほしいから顔を出した」と思いを語った。 この日の口頭弁論で原告側は「遠藤牧場関係者はいわば『里親』だ」と説明した恵庭市に対して反論。恵庭市が知的障害者福祉法で定められた「職親」制度を適用して職業訓練委託をしていれば、原告らがひどい環境での労働を強いられることはなかったと主張した。 3人の原告の中で初めて報道機関に顔を出したのは、石狩地方に住む佐藤さん=仮名。緊張した面持ちで原告席から口頭弁論を見守り、終了後に記者会見に臨んだ。2022年まで約20年間、遠藤牧場で働いていた日々を振り返り、「自由が何もなかった。買い物に行くこともできなかった」と訴えた。 弁護団長の船山暁子弁護士は「裁判開始当初から佐藤さんは、お金も返してほしいし、謝ってほしいと話していた。次回以降は遠藤牧場側に対し、生活実態を明らかにするための主張を展開したい」と方針を示した。【後藤佳怜】