カサビアン圧巻の来日公演を総括 サービス精神旺盛な「20年選手」の底力
デビュー・アルバム『Kasabian』をリリースしてから20年という節目を迎えたカサビアン(KASABIAN)。新作『Happenings』が全英アルバム・チャートで1位を記録し、2ndアルバム『Empire』(2006年)から7作連続No.1という偉業を成し遂げたタイミングで、実に12年ぶりの単独来日公演が実現した。初日の10月7日、Zepp Hanedaでのライブレポートをお届けしよう。 【写真ギャラリー】カサビアン東京公演初日ライブ写真(全12点) 開演予定時刻の19時より数分早く客電が落ち、ノイ!の「Hallogallo」が流れる中メンバーが入場。電話のベルを合図に『Happenings』から「Call」が披露されるや、悲鳴にも似た歓声が上がった。2022年のソニックマニアと同様に、サージ・ピッツォーノはギターを持たずに登場。ラッパーを思わせる身振りでステージ上を闊歩しながら歌うスタイルも、前回よりずっと様になってきて軽やかに見える。 続いて、ソニックマニアで1曲目だった「Club Foot」を投下。ハンドマイクで歌うサージの堂々たるアクションがバンドのグルーヴとぴったり噛み合い、早くも序盤から壮絶な盛り上がりを見せる。久しぶりに生で体験したリズム隊の威力は衰えなど微塵も感じさせず、やはりこの強靭なグルーヴこそがカサビアン・サウンドの柱なのだなと改めて痛感させられた。その熱が冷めないうちに、曲は「Ill Ray (The King)」へと突入。サージは「バウンス! バウンス!」と煽り続けてオーディエンスを休ませない。 そろそろギターを弾くサージも見たい……と思ったところで、彼が最近愛用しているグリーンのリッケンバッカーが「Underdog」から登場。電撃的なイントロのリフは、やはりサージの見せ場だ。ティム・カーター、そしてサポートを続けているザ・ミュージックのロブ・ハーヴェイとトリプルギターで重厚に迫る。ティムが弾くテルミン、イアン・マシューズのドラムロールが交錯し、クリス・エドワーズのベースが唸りを上げる後半の展開は圧巻だった。 前作『The Alchemist’s Euphoria』(2022年)から演奏したのは「Chemicals」のみだったが、アルバムバージョンよりずっと骨太で疾走感にも磨きがかかり、曲が育っていることを如実に感じさせる大熱演。バンド内で存在感を増してきたティムのギターソロも、なかなか聞かせる。そこから矢継ぎ早に「Shoot The Runner」へと続け、暴れたいオーディエンスを存分にジャンプさせる流れは鮮やか。思えば2000年代半ば、こんな風にゲイリー・グリッターお得意のビートパターンを増強、再提示したバンドは彼らだけだった。