カサビアン圧巻の来日公演を総括 サービス精神旺盛な「20年選手」の底力
「何だってやる」を有言実行
驚いたのは「You’re In Love With A Psycho」から始まるメドレー。間にテイ・トウワが在籍していたディー・ライトの名曲「Groove Is In The Heart」(1990年)を挟み、新作一メロウなロック・チューン「Coming Back To Me Good」へとつなぐ構成は、DJプレイさながらの鮮やかさだった。新作からもう1曲披露した「Italian Horror」では、キャッチーなコーラスでたちまちシンガロングを巻き起こす。この圧倒的なわかりやすさ、歌いながら体を揺らしたくなる気持ちよさは、前作から育んできた“今のカサビアン”を象徴する個性だ。 次の「treat」で冒頭に鳴り響いたのは、何とビースティ・ボーイズ「Intergalactic」(1998年)のイントロ! 絶妙なはまり具合にクラクラしていると、続けて演り出したのはプロディジーの「Breathe」(1996年)で、先ほどのディー・ライトに続いて90’sクラブヒットをちりばめてくる。サージが自分と同年代のファンを想定して、泣かせにかかっているとしか思えない作戦だ。そして「Vlad The Impaler」「Empire」とフロアバンガーを連打後、またしても90’sでファットボーイ・スリム「Praise You」(1998年)をチラッと演ってから、「L.S.F.」に突入して本編終了。ここまでやられて盛り上がらないわけがない。 アンコールで1stアルバムからこの日3曲目となる「Reason Is Treason」をやってくれたのは、20周年を意識したプレゼントだったかも。ノイ!を思わせるビートが、一周してオープニングのBGM「Hallogallo」に戻ったような気分を味わせてくれる点も心憎い。本編で見せた90’sへのラブレターみたいな演出に対し、アンコール2曲目の「Bless The Acid House」は伏線を一気に回収するかのような爽快感があった。この曲は特にそうだが、ロブ・ハーヴェイのバックボーカルが前回の来日時以上に利いていたのも、うれしい収穫だ。 ラストの「Fire」まで正味75分ほどのショーは、一切無駄がなく、ほぼ完璧と言っていい流れ。サージの手からビームを発射する演出まであってサービス精神旺盛だ。7月に行なったインタビューでサージが「お客さんが思わず立ち上がって、ぶっ飛ぶくらい思い切り楽しんでもらうためには何だってやる」と言っていた通り、彼は徹底的にやり抜く有言実行の男であった。他にも聴きたい曲は山ほどあるが、観客の反応次第で2日目以降は構成に変化が出てくるかも。バンドとして最高の状態を迎えている20年選手の底力を、細部まで存分に味わって欲しい。 --- カサビアン来日公演 2024年10⽉7⽇(⽉)・8日(火) 東京・Zepp Haneda 2024年10⽉10⽇(木) 大阪・Zepp Bayside カサビアン 『Happenings』 発売中
Masatoshi Arano