中国EV戦略、成功が欧米との対立激化招く-習氏の重要演説から10年
(ブルームバーグ): 中国最大級の自動車メーカー、上海汽車集団(SAICモーター)を視察した習近平国家主席は10年前、電気自動車(EV)市場での中国の覇権を狙う重要な演説を行った。
国営新華社通信が2014年5月24日報じたところによれば、習氏は自動車製造強国への道は新エネルギー車(NEV)開発だと同日述べた。この分野で先行することが、世界競争の鍵を握ると習氏は主張した。
中国は14年、約7万5000台のEV・ハイブリッド車を販売し、約53万3000台を輸出した。国内市場はドイツのフォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)など外国勢が圧倒的に優位だった。
外国の自動車メーカーは1980年代から90年代にかけ、中国勢との合弁事業を通じ中国参入が認められた。外国のパートナーと協力していない国産車や国内ブランドは、エンジンやその他の自動車技術において劣り、後れを取っていると見なされていた。
競争をリードし環境問題に取り組むため、中国政府が着目したのは燃費の良い代替エネルギー車だ。政府はNEVの指針を2012年に策定し、販売目標設定や補助金支給、充電インフラ建設などに経営資源を割り当てることで、この産業を発展させる手法を確立。
習氏はその2年後の14年、これを従来の欧米やアジアの自動車大国、特にトヨタ自動車を擁する日本を追い抜く方法として活用していくとの決意を演説で示した。
起爆剤
舞台を整えた中国は、消費者のEVへの関心を喚起するきっかけを必要としていた。その起爆剤となったのが米テスラだ。同社は中国で完全所有の拠点を設立した最初の外国自動車メーカーとなった。
そうした優遇措置を得たテスラは19年に上海工場を完成させた。同社の参入で、現地の自動車メーカーはより航続距離の長い優れたEVを開発するようになった。
中国は世界最大の自動車市場となり、昨年はどの国よりも多い950万台という電動化車両が引き渡された。EVバッテリーのサプライチェーンも中国が大半を握っている。中国のEV市場をけん引する比亜迪(BYD)はVWを抜き、中国で最も売れているブランドとなった。