中国EV戦略、成功が欧米との対立激化招く-習氏の重要演説から10年
BYDはまた、23年10-12月(第4四半期)にはテスラに代わり世界最大のEVメーカーとなった。日本を抜き世界一の自動車輸出国にもなった中国は昨年、海外に414万台を出荷。そのうち155万台がEVもしくはプラグインハイブリッド車だった。
欧米との緊張
この成果は、中国政府の産業政策と投資が実を結んだことを立証している。しかし、同時に欧米との緊張も高まった。EVを巡る中国の成功は、数百万人を雇用する従来の自動車サプライチェーンを混乱させる可能性があり、ワシントンやブリュッセルでは強い不快感が示されている。
中国の自動車メーカーは国内市場の価格競争と成長鈍化を受け、テクノロジー満載で手頃な価格のEVを売り込もうと国外を目指すようになっており、欧州連合(EU)と米国は中国が過剰生産能力を輸出していると非難している。
米国は中国製EVに課す輸入関税を4倍の100%以上に引き上げようとし、EUは政府の補助金による不当な優遇措置がなかったかどうか中国製EVを調査している。
ブラジルは最近、輸入EVの減税措置を撤廃。中国の同盟国であり、ウクライナへの侵略開始以来、中国製自動車の最大の輸出先であるロシアでさえ、中国自動車メーカーに現地生産を検討するよう求めている。
中国は反撃に出ると欧米を威嚇。在EU中国商業会議所(欧盟中国商会、CCCEU)は21日の発表文で、大型エンジン搭載車の輸入関税を15%から25%に引き上げる可能性があると示唆した。EUは6月5日を期限として、中国のEV輸出企業に予備的な調査結果と関税が課されるかどうかを通知する。
習氏が10年前に視察した国有の上海汽車は、BYDと浙江吉利控股集団と共に、EUの反補助金調査で追加の検証対象となった中国自動車メーカーのうちの1社。上海汽車は英国発祥のブランド「MG」を保有。MGは欧州でトップクラスのEV販売を誇る。
上海汽車は習氏の演説から10年を記念するイベントを24日に開催した。チーフエンジニアを含め同社の幹部は習氏の指示をよく覚えていると話した。10年の間に多くのことが起こり得るが、上海汽車は過去10年だけでも研究開発に約1500億元(約3兆2500億円)を投じており、貿易戦争にもかかわらず、10年後の34年は明るいとみている。