花粉症対策でスギ人工林を2割削減 政府目標に森林ジャーナリスト「今の人員ではまず無理」 伐採しても売れない・使えない問題も?
春の陽気となる日が出てきた一方で、聞こえてくるのが「目がやばい。鼻がやばい」といった声。花粉症を抱える人には辛い季節が到来。ウェザーニュースの分析によると、13日までに東京や埼玉、九州など西日本の一部や静岡が花粉シーズンに入ったとしている。 【映像】花粉症が及ぼす経済損失額、1日あたり約2215億円 花粉症が労働力低下に及ぼす経済損失額は、1日あたり約2215億円になるとの試算も(パナソニック調べ・2020年)。政府は都市部周辺でスギ人工林が集中しているエリアを伐採重点区域として設定し、花粉の少ない苗木への植替えを促進する方針で、2033年度までにスギ人工林を約2割削減させることを目標としている。 こうした対策で軽減できるのか。超党派の花粉対策議連・通称「ハクション議連」幹事長の立憲民主党の後藤祐一衆議院議員と専門家とともに『ABEMA Prime』で考えた。
去年10月、花粉症に関する関係閣僚会議がとりまとめた初期集中対応パッケージは「発生源対策」「飛散対策」「発症・曝露対策」の3つ。花粉症対策としてのスギ伐採に反論している森林ジャーナリストの田中淳夫氏は「発生源になぜこだわるのかは疑問だ。スギの他にも60種類ぐらいの樹木の花粉が引き起こすと言われていて、それらを全部切る気なのか」と疑問を呈する。
従事者が足りない、苗木がない、買い手がいない・使い道がないことから、2割の伐採は無理だと田中氏はみている。「林業の従事者は全国で4万4000人ぐらい。10年で2割減らすということは、1.7倍ぐらいの伐採量にしなくてはならず、今の人員ではまず無理だ。また、林業は非常に危険な仕事で、事故率は全産業平均の10倍以上。そこに新人を注ぎ込むのは危ない」。 スギ苗木の生産量(2021年度)は2840万本で、このうち花粉の少ないスギ苗木は1512万本と53.2%まで上昇している。しかし、「全然足りていない。現時点でも伐採した後に植えているのはたかだか3、4割で、残りはそのまま放置されている。これ以上伐採量を増やしても、おそらく植える苗木はない」「伐採のほうはかなり機械化しているが、植えるほうはほとんど手作業だ。しかも急斜面を上ったり下りたりする。そういう中で、植える側の林業従事者は極めて少ない」と指摘した。