攻撃陣にも守備献身求める森保J…久保建英「最低限の基準が他のチームと違う」掲げる理想と前向きな現実
日本代表MF久保建英(ソシエダ)が北中米W杯アジア最終予選第4戦・オーストラリア戦(15日・埼玉)を2日後に控えた13日の練習後、報道陣の取材に応じ、W杯アジア予選で無失点が続いているチームの守備面に言及した。 【写真】「昇天した」「救急車で運ばれちゃう」伊東純也のモデル顔負けショットに大反響…久保建英らも脱帽 日本代表は昨年11月に開幕した今回の北中米W杯アジア予選で、2次予選から最終予選に至るまで全8試合無失点を継続中。間に行われたアジアカップでは全試合失点が続き、大きな課題を残していたが、大会後は再び堅守を取り戻し、最終予選も中国戦(○7-0)、バーレーン戦(○5-0)、サウジアラビア戦(○2-0)とクリーンシートを続けている。 その要因としては3バック導入に伴う守備陣の安定もさることながら、ウイングバックにアタッカーを起用する攻撃的布陣ゆえ、前線の守備強度も不可欠。ここまでの最終予選でも南野拓実(モナコ)、堂安律(フライブルク)、三笘薫(ブライトン)ら攻撃に強みを持つ選手が長い距離をプレスバックする場面がたびたび見られ、守備の献身性でも存在感を発揮していた。 こうした状況について堂安はサウジアラビア戦後、「森保さんも記者会見でよく言っているけど、前線の守備意識がないとこの代表はメンバーに入れないようになっているし、それを監督が示してくれている。やらなきゃいけない規律、決まりがある、そういうチームは強い」と発言。「はっきり言ってくれる監督がいると示しがつく。それが今のベースになっている」とも述べ、森保監督のコンセプトによるものであることを示唆していた。 そうした守備強度は前線のポジション争いを繰り広げる久保にも求められるものだ。13日の練習後、久保は報道陣から堂安の発言について問われると、「大前提として攻撃で違いを作れなかったら呼ばれないと思うので、その上で攻撃に違いを作れる選手が守備もできるということが伝えたかったことだと思う」との見解を示しつつ、森保ジャパンの守備コンセプトについて次のように語った。 「前目の選手は点を取ってナンボだったり、攻撃で違いを見せてナンボだと思うので、その上で最低限の守備を求められる。ただ、その最低限の基準が他のクラブチームや代表チームと違って、よりいかに相手にチャンスを作らせないかに重きを置いている。そこで他とは違った守備の仕方が求められているのかもしれませんね」(久保) 久保は所属先のソシエダでは、普段は右ウイングの高い位置でファーストプレスを担っており、自陣まで深く戻って守備に追われるような機会は少ない。一方、日本代表では味方がボールを奪われた際や、5-4-1の守備ブロックを組む際には、より低い位置まで長い距離を戻って守備をすることも求められるため、プレーの判断にギャップが出てくることもある。 もっとも久保はそうした現状について、理想と現実の両方を真っ向から受け止めようとしているようだ。 「この代表では長い距離を一人で戻ってという個の力に頼った部分もあって、それは(プレッシングが)上手くハマらなかった結果、個人が頑張っている部分もある。理想は僕がチームでやっているような、前目の選手が(コースを)切ったりとか、誘導してチームでボールを取るのがベストだと思う。そこ(戻って守備をすること)に重きを置きすぎてしまうと、もっとレベルが上のチームとやった時に後手に回ってしまう。しかもいまはファイブ(5バック)でやっていて、ファイブで0-0の状況でベタ引きに追い込まれるほど勝ち目の薄い戦いはないと思う。そこはやっぱり前からうまく行って、前で体をぶつけてボールを取れることもほぼないと思うので、しっかりコースを限定したり、チームとしてルールを守ってやるのがベストだと思う。でもそこ(前からのプレッシング)で補えないところをいまみんながしっかり奪い切るだったり、戻り切るというところをみんながやってくれている。そこで後ろの選手が前の選手に救われている部分もあると思うし、そこはチームとしての一体感があって素晴らしいなと思う」 サウジアラビア戦では前半27分、前線からのプレッシングがハマらなかったところからサイドを突破され、DF町田浩樹、DF板倉滉、MF遠藤航、MF守田英正らが次々と折り重なるようなシュートブロックを繰り出し、失点を阻んだ場面があった。身体を張った守備という点で大きな賞賛を集めたワンシーンだが、布陣の修正に成功した後半はこうした事象すら起きなかったことから、ピンチを作られたという点では課題も残るワンシーンでもあった。 この場面についても久保は、チームとしての理想を掲げつつ、身体を張った守備ができているという現実を前向きに見つめた。 「まだ振り返りがそこまでできていないけど、理想は多分そうですよね。日本代表がもっと強くなっていくにはあそこまで持って行かせないのが大前提になると思う。でも今はしっかりブロックで2、3人滑っているところ。昔から僕の記憶の中では、日本代表は、歴代の代表選手はああいうところをみんなやっていたと思う。でも、もう一つ上に行きたいならあそこまで行かせないことが大事だなと思います」 そうした現状認識の先に控えるオーストラリア戦。4-3-3で臨んできたサウジアラビアとは異なり、オーストラリアは3-4-2-1の布陣が予想されるため、プレスは無理なく噛み合うことも予想される。それでも久保は「ミラーゲームを想定しているので、僕らのほうがボールを握れればベストだなという話を全体で共有している」としつつも、「そうならなかった時のプレスの掛け方も練習でトライしている」と想定外の可能性も示唆。「僕がどうこうというよりチームとしていい形を持てるかが大事だと思う」と試合中の対応への期待をうかがわせた。