知られざるフェルトの製品哲学|FELT FR/VR/ブリード試乗記(前編)
大切なのは製造技術
なお、このテキストリームカーボンからも分かるように、フェルトは積層にこだわるメーカーである。工場にフレーム製造を委託する際、メーカーの開発部門から工場にレイアップスケジュール(フレームに用いるプリプレグの種類、形状、角度、場所、順番などが記載された指示書)を提出するが、その指示書の枚数がフェルトは通常のメーカーの数倍にものぼるという。 プレスリリースに誇らしげに記述されるのも、プロダクトマネージャーが自慢げに語るのも、そのほとんどが設計技術である。どんな技術が投入されてエンジニアがどのように工夫をこらしたか――。 もちろんそれも重要なのだが、それと同じくらいに重要なのが、製造技術である。エンジニアがいくら緻密で天才的な設計をしたとしても、同じクオリティで大量に作れなければ意味がない。プリプレグの貼り込み工程の管理がラフでプリプレグの位置や角度がずれたら、緻密な設計は台無しだ(多少ズレることを見込んで、あらかじめプリプレグを大きめに設計しておくケースもあると聞く=重量増・過剛性)。 フェルトはそこまでこだわっている。もちろんそのぶんコストもかかるだろう。しかも、宣伝材料にはなりにくい。それを聞いて興奮するのはマニアックな自転車評論家くらいのものだ。フェルト、やっぱり真面目なのである。 新型FRのフレームは、今のところアドバンスドグレード(フレーム重量900g)のみ。より軽量なアルティメイトは開発中で、重量は750gになる予定だという。 販売形態は、アルテグラ完成車、105Di2完成車、機械式105完成車の3種類。50万円弱となかなか魅力的なプライスタグを下げる機械式105完成車はさすがにアルミホイールだが、上位2機種はレイノルズのカーボンホイールを履く。後から手を入れる必要はほとんどない、いいパッケージである。 FR 4。0 | クライミングレースバイク。
オールロードのVRも同時デビュー
そんなFRと同時にデビューしたのがVR。フェルトはグラベルロードのブリードもラインナップしているので、このVRはエンデュランス~オールロードという位置づけだ。オールロードだがレーシングも視野に入れているという。 旧型VRに比べると、フレーム形状は一気に近代的になった。最小限のメーカーロゴにフロント車軸から後輪上端に向けてスパッと切ったような塗り分けも特徴だ。見た目の変化はFRよりも大きく、激変と言っていいレベルである。 端正なフレーム形状、D型コラム、真円シートポスト、UDH、T47Aなど、FRとの共通点も多いが、こちらは悪路での快適性を高めるため、ドロップドシートステーを採用し、さらにシートポスト部に振動減衰スリーブを入れ、サドル部の快適性を高める工夫が盛り込まれている。 FR、VRに共通する見どころはジオメトリ。フレームサイズはカーボンフレームにしては多めの7種類(国内では完成車で4種類、フレームで5種類)で、シート角やヘッド角はサイズ毎に細かく調整されており、全サイズ統一とされることも珍しくないチェーンステー長は3種類(VRは2種類)。フォークオフセットも2種類あり、リーチは漸増的に伸びている。 商品力として理解されにくいジオメトリは、真っ先にコストダウンの餌食になるところだが、フェルトは手を抜いていない。何度も言うが、真面目だ。 販売形態はFRと同じ(アルテグラ完成車、105Di2完成車、105完成車)で、価格もFRシリーズと同一とされる。 VR 4。0 | オールロードバイク。 見た目とスペックを見る限り、相変わらずフェルトは真摯なバイク作りをしているようだ。しかし自転車は走ってみなければ分からない。次回、旧型のFR&VRもお借りし、FRとVRの新旧比較を行うほか、ブリードにも試乗し、“フェルトの今”をレポートする。 後編はこちら 。 10月19日‐20日に試乗会を開催。 イベント詳細はこちら。 問:ライトウェイプロダクツジャパン
Bicycle Club編集部