引退を表明の中日・田島慎二、「中継ぎや抑えは目立たなくていいんです。先発、打った人がいて勝つ。それでいいんです」ブルペンの美学
今季限りで引退する中日・田島慎二投手(34)が22日、バンテリンドームで会見した。球団歴代10位の461試合に登板した右腕。チームメートへ報告した際のやりとりを思い出し、涙腺は緩んだ。ドラフト指名で涙してから13年。大野や祖父江から花束を受け取った”泣き虫タジ魔神”は、後輩へ悔いのないプロ生活を送ってほしいと金言を残した。 田島はこれ以上ないスッキリした表情を浮かべて席に着いた。「本日はおつまり…、おまつり…、お集まりいただきありがとうございます。今季をもって、現役を引退します。13年間、お世話になりました。ありがとうございました」 冒頭のあいさつをかんだのは、野球人生をブルペンで過ごしてきたから。「大勢の前で話すことに慣れていません。中継ぎや抑えは目立たなくていいんです。先発、打った人がいて勝つ。それでいいんです」。ピンチで出て抑えても、セーブを積み重ねても、お立ち台を断るのが美学だと感じていた。 だから、10月5日のセレモニーを用意すると球団から提案されたとき、少し考えた。「ありがたいお話なのは分かっていますが、しゃべれるかなって。迷いました」。両親から「晴れ姿を見せてくれ」と伝えられ、照れよりも、節目のあいさつをすることが大切だと思い定めた。 13年前に泣いたのは、恩師や家族にドラフト指名で恩返しができたから。引退を前に泣いたのは、また別の理由だった。インタビュアーからチームメートへ伝えた際のエピソードを聞かれたときだった。 「大野さんと祖父江さんには『土産があるから、家まで持っていくね』とうそをついて。電話じゃなくて、直接伝えたかったんです。大野さんからは『お疲れさまは最後までとっておくわ』と。祖父江さんは『オレも分からないけどな』と言ってたけど、『まだまだいけるぞ』と僕の気持ちを伝えました」。同世代の投手との思い出がよみがえり、頰に涙が伝った。
中日スポーツ