震災10年の思い、夏も力に 仙台育英・島貫主将 選抜高校野球
東日本大震災の被災地からの出場校として、昨年春夏の甲子園大会に出られなかった先輩たちを引き継いだ者として、さまざまな思いを背負って臨んだ大会だった。第93回選抜高校野球大会第9日(29日)の準々決勝。仙台育英(宮城)の島貫丞(しまぬきじょう)主将(3年)は1点差に詰め寄った三回1死二、三塁の好機で力強くバットを振り抜いた。 【今大会のホームラン】 「震災10年の節目の年に東北勢初の優勝を」との思いで仲間たちと練習を積み重ねてきた。組み合わせ抽選会で選手宣誓のくじを引き当てたのも、何かの縁を感じた。19日の開会式では3分を超える宣誓で観衆を引き込んだ。東北の代表校として復興を伝え、新型コロナウイルスの感染拡大により昨年のセンバツ大会を経験できなかった先輩たちの気持ちも背負った「2年分の思い」も伝えた。 試合では1回戦で四国王者の明徳義塾(高知)を破ると、2回戦では神戸国際大付(兵庫)を撃破し、順調に勝ち上がった。20年ぶりの4強入りを懸けて対戦する相手は大会屈指の好投手、達孝太投手を擁する天理(奈良)。達投手対策として、チームでは高めの直球は振らないことを徹底してきた。その成果で序盤は四死球が多く取れたが得点には至らなかった。 しかし三回、先頭の八巻真也(やまきまさや)選手(3年)の本塁打で反撃を開始すると、島貫主将が振り抜いたボールはセンターへの大きな弧を描き、三塁走者をタッチアップで還して同点とした。 今大会は新型コロナウイルスの感染防止対策としてブラスバンドの応援は禁止されたが事前の録音がスピーカーで流され、たくさんの拍手などで送られた応援が力になった。「応援が無いのは甲子園じゃない。球場の雰囲気が力をくれる」と感じた瞬間だった。 試合はその後徐々に引き離され、3―10で敗れた。試合後、「宮城の方や東北の方に応援してもらって、一つ一つのプレーの大切さや節目の思いがたくさん乗る大会で、発揮できなかったのは力が足りていなかった」と悔しさをにじませた。 8年ぶりの8強入りで甲子園の幕は下り、白河の関を越えて紫紺の優勝旗を持ち帰ることはできなかったが、甲子園は「自分の人生を大きく変えてくれた。(選手宣誓で伝えた)さまざまな人の思いを持って大会に臨めたことが大きな成長につながると思う」と振り返り、「10年後とか将来出場するチームもその思いをくんで大会に臨んでほしい。そういう思いが継続されてこの大会は続く」と語った。大会で見つかった多くの課題に向き合い、「自分たちが東北初優勝するんだ」という思いで仕切り直し、経験を糧にして夏の甲子園に挑むことを誓った。【面川美栄】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。