朝日がさす雲海に浮かぶ山々。 水墨画のような風景が広がるのは中国・安徽省にある世界遺産・黄山です。 中国を代表する景勝地として知られる黄山。 2023年は約450万人が訪れるなど毎年、多くの観光客でにぎわう一方、休憩所などは常に大混雑。 そのため現地では観光客の上限を決めるなどの対策をとり、オーバーツーリズムを防いでいます。 それでも現地の人々を悩ませているのが、観光客が持ち込む大量のゴミの扱いです。 山の自然を守るため、日本ではゴミを持ち帰るのがマナー。 しかし中国では、現地で処理するのが一般的なため、黄山では至る所にゴミ箱が設置されています。 ところが、ここ数年の景気低迷の影響を受け、国内旅行の人気が高まり、世界遺産の黄山にも多くの人が殺到。 そのためマナーの悪い観光客によるゴミの放置や、ポイ捨てなどが横行しているというのです。 こうした状況を改善しようと活動しているのが、200人以上いる専門の清掃員。 中でも注目は、谷底に捨てられたゴミをロープで下りて回収するスタッフ。 地元メディアは“スパイダーマン”と呼んでいます。 18人いるスパイダーマンをまとめているのは、李培生さん。 この道27年のベテランスパイダーマンです。 “スパイダーマン清掃員”李培生さん: （崖から下りるのは）普段は1日に4～5回くらいです。岩や壁にぶつかることもあるので、打撲も珍しくない。 この日、下りたのは道路から30メートルほど下のポイント。 これまで何度も上り下りした慣れた箇所ですが、一歩間違えれば転落する危険もある場所です。 そんな命がけの清掃作業には観光客もくぎ付け。 この作業のため普段、ふもとには下りず山頂近くの事務所に泊まり込んで日夜、ゴミのパトロールに当たっている李さん。 そうした長年の功績が評価され2022年、習近平国家主席から手紙が届き、一躍その名が知れ渡ることになりました。 ゴミのポイ捨てがなくなればスパイダーマンの必要もなくなりますが…。 “スパイダーマン清掃員”李培生さん: 環境がよくなるなら私たちは失業してもいい。