窮地を救う日本のリベロ!山本智大「小川の思いも背負って戦う」初戦黒星もスーパープレーで魅せた【パリ五輪】
52年ぶりの金メダル獲得を狙う男子バレー日本代表は7月27日、2012年のロンドン大会以来の出場となる世界ランク11位のドイツと対戦した。男女を通じてバレーボールの初戦、天井やサーブ時に移動するクレーンカメラを気にする様子も見られるなど、第1セットはドイツのサーブに押され17-25。劣勢からのスタートとなった。 【画像】セーヌ川で行われたパリ五輪・開会式の模様をお届け!ジダンとナダルの共演やレディ・ガガの起用、セリーヌ・ディオンに生首の歌唱も これまで鉄壁といっても過言ではなかったディフェンス面で、ドイツのブロックに対してリバウンドを狙ったボールがそのまま落ちてしまうなど、やや硬さも目立つ中、日本に流れを引き寄せたのはリベロの山本智大のレシーブだった。 第2セットも中盤までドイツが先行し、日本は追う展開が続いた。終盤、石川祐希のバックアタックで23-23と同点にしたところで、ドイツは第1セットにもサーブで連続得点を挙げた39歳の“キング”と呼ばれる大砲、ギョルギ・グロゼルにサーブ順が回ってくる。サーブを打つ直前に自らスパイクを決め、乗っているグロゼルに決められれば日本は崖っぷちに立たされる。ここで救ったのが、山本だ。 自身のサーブで崩した後、グロゼルが放ったバックアタックを日本も拾う。強打の勢いに押され、コート後方へと飛んでいこうかというボールを懸命に走り、ただつなぐだけでなく次の選手がつなぎやすいように、可能であればスパイクを打てるトスにできるようにと、より正確性を求めて両手で上げたボールを、最後に髙橋藍が決めた。このプレーで24-23とリードした日本は、続いて石川祐希がスパイクを決め25-23でこのセットを取り返した。 俺の得点だ、とばかりに、得点した髙橋藍以上に観客へアピールし、チームを鼓舞する。その後も山本の声が大きく響く場面は何度も見られた。 第1セット序盤に、立て続けにサービスエースをとったグロゼルに対しても、2セット目以降は完璧に近い形でサーブを返して見せた。フィリップ・ブラン監督が「日本には世界ナンバーワンのリベロが2人いる」と公言してきたように、パリ五輪に向けては、同じリベロの小川智大と最も強い絆で結ばれた存在でありながらも、オリンピックのコートに立てるのは1人。厳しいポジション争いの末、選出されたのが山本であり、山本自身も「小川の思いも背負って(パリ五輪は)戦う」と何度も口にしてきた。 リベロはスパイカーと異なり、自らのサーブやスパイクで得点を取ることはできないが、相手が「取った」と思う1点をレシーブでつなぎ、自チームの得点につなげることはできる。自身2度目となるオリンピックでも、これぞ山本、というスーパープレーを見せつけた。 しかしながら試合は1セットをドイツに先取され、2、3セットを日本が取り返すもデュースの末に4セット目を落とし、5セット目もドイツのサーブとブロックに屈する形となり、フルセット負けを喫した。 メダル候補として期待も高く、まさかの敗戦ととらえるかもしれないが、予選リーグは続く。アルゼンチン、アメリカと強敵ぞろいであるのは間違いないが、悔しい敗戦が日本にとってはむしろ活力となって働くかもしれない。昨年のオリンピック予選でも格下と見られていたフィンランドにフルセット勝ちの翌日、エジプトにはまさかのフルセット負けという危機的状況から蘇り、パリオリンピックの出場権を手に入れた。 次はアルゼンチン戦。山本のレシーブはもちろんだが、この負けがあったからこそ、また強くなれたという戦いぶりを見せてくれるはずだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]