阪神戦力外から中日で奮闘の30歳コンビ 山本泰寛と板山祐太郎
今季から中日でプレーしている山本泰寛内野手(30)と板山祐太郎外野手(30)の同学年コンビが奮闘中だ。ともに昨季、日本一に輝いた阪神から戦力外通告を受け、中日入り。内野の全ポジションを守れる山本は、春季キャンプから1軍に帯同し、シーズン46試合に出場。育成選手として入団した板山は5月に支配下登録され、バッテリー以外は全て守れる「便利屋」として16試合に出場。若手が多く、選手層が薄かったチームで存在感を示している。(時事通信名古屋支社編集部 浅野光青) 【ひと目でわかる】中日の観客動員数(2010年以降) ◆キャンプから存在感 山本 山本は慶大から2016年に巨人入りし、20年オフにトレードで阪神に移籍。21年は69試合、22年は86試合に出場したものの、岡田彰布監督体制になった昨季は出場機会がなかった。昨年11月、中日への入団記者会見で「今年は1軍で出場もなかったので悔しい思いをした。拾ってもらってうれしいし、恩返ししたい」と意気込みを示していた。 春季キャンプで安定した守備力などをアピールし、開幕1軍入り。シーズン当初はベンチスタートだったが、4月13日に行われた本拠地での古巣阪神戦で初先発の機会が巡ってきた。相手先発が左腕の大竹耕太郎投手だったこともあり、8番遊撃で出場。三回に左前打、五回に右前打を打つと、2点リードの八回には適時打を放って移籍後初打点をマーク。3安打1打点の活躍で2季ぶりのお立ち台に上がった。「相手がタイガースだからという感じではなくて、久しぶりのスタメンだったので緊張した。ヒーローインタビュー自体が久しぶりなので、すごくお客さんが多いなと思う」と素直に話した。 6月23日の広島戦では遊撃手の村松開人内野手が負傷し、四回の守備から緊急出場。五回に二遊間へのゴロに飛び込んでアウトにする好守を見せると、八回の攻撃では先頭で四球を選んで勝ち越し点を呼び込んだ。その試合を終えた時点で打率2割4分2厘、1本塁打、6打点とまずまずの成績。「出る時は、やってやるぞというより無心でやることをやるだけ、と冷静に(試合に)入れている」と自己分析。「昨年我慢して、自分の技術向上に向けてしっかりと練習してきた。だから今年は、やるべきことができていると思う」。苦悩の時間を過ごした1年は、決して無駄ではなかった。 ◆8年が過ぎ、チャンス到来 板山 板山は阪神での昨季、開幕1軍に入ったが12試合の出場で1安打のみ。5月1日に出場選手登録を抹消されてから、再昇格の機会がなかった。「岡田監督になって秋季キャンプからアピールできて、今年こそはとスタートしたが、気持ちと結果がかみ合わず、あっという間に1年が終わった」と振り返る。亜大からドラフト6位で入団してプロ8年間を過ごした阪神では、通算で137試合に出場。「ほとんど苦い思い出。(中日移籍という)チャンスをもらえたので、応援してくれている人にいい姿を見せれるように頑張りたい」 キャンプから2軍で過ごし、5月5日に支配下登録された。その日は、亜大時代に東都大学リーグでプレーした神宮球場でのヤクルト戦。6番二塁で起用されると、3打数1安打と好スタートを切った。その後、チーム事情でいったん2軍へ落ち、6月5日に再昇格してからも打撃でアピールを続けている。 ◆6年ぶりの猛打賞 6月9日のセ・パ交流戦、楽天戦では3週間ぶりの先発出場となった。試合前に6番二塁で出ることを知り、緊張感からか「急に吐き気がした」。それでも、スタメン抜てきに結果で応えた。二回の第1打席。一塁へのゴロを転がすとヘッドスライディングして内野安打をもぎ取った。これで波に乗る。四回は先頭で逆転の呼び水となる右翼線二塁打。五回には2死一塁で中前打を放ち、続く打者の適時打につなげた。 2018年以来、6年ぶりの猛打賞。守っては七回に二遊間への難しいゴロを逆シングルでさばき、攻守で勝利に貢献した。立浪和義監督は「めったにないスタメンで、守備も打つ方でも非常にいい働きをしてくた。チーム編成上の理由で(2軍に)落としていることもあったし、どこかでチャンスは与えたいと思っていた。見事に起用に応えてくれた」。頼もしそうに、そう語った。 6月23日の広島戦でも先発で起用され、2安打1打点で勝利に貢献。出場試合数こそ少ないが、打率は3割1分7厘。厳しい練習の亜大でもまれてきただけに「泥臭く、一本のヒット、一本の守備に全て全力で落ち組むのが僕のプレースタイル。そこは野球をやめるまで続けたい」。その思いを胸に、1軍に食らいついている。 ◆ヤスとイタ「一緒にお立ち台に」 同学年の2人は、阪神で3年間一緒にプレー。今季もグラウンドではキャッチボールをしたり、一緒にノックを受けたりする。板山は「たまに食事にも行く。互いに(一度は)クビと言われた身として、一緒にお立ち台に上がれたらいいかな、とか思う。ヤスは慶応OBなのでスマートなんだけど、仲はいい」。そう笑いつつ、本音も漏らす。「人のことを気にしている余裕もないけどね」。山本も、きっぱりとこう話す。「ポジションもかぶっているし、イタが活躍すると僕は出られなくなる。2人で結果を残せるのが一番だが、ライバルとして刺激し合いながら、自分が出た時は活躍しようと思う」 強い気持ちを持って戦う姿勢は立浪監督が就任以来、選手に求めている。「必死さがプレーに表れているし、結果も出してくれている。たくさんのファンが応援してくれているので、ずっと出ている選手は、とにかくもっと、ピンチでもチャンスでも腹を据えて必死な姿をチーム全体で見せていかないと。その辺は(山本と板山を)見習ってほしい」と同監督。仁村徹編成統括も「自分を使ってくれて活躍できたら、その監督をいい監督だと思う。そう思うのは当然だから、全然(気持ちが)違う。そういう子は一年頑張るよ。結果だけじゃなくて、努力する姿も苦しんでいる姿もみんなが見ているはず。そういう選手がはい上がってくれると(チームにとって)強い」と評価している。