大企業製造業の景況感は4四半期ぶりの悪化(日銀短観3月調査):日銀の政策判断への影響は小さい:日本経済は輸入インフレ・ショックからの正常化過程
1-3月期も経済の低調が続く
日本銀行が4月1日(月)に短観(3月調査)を発表した。大企業製造業の景況判断DIは前回比2ポイントの低下、大企業非製造業の景況判断DIは前期比2ポイントの上昇と、ともに事前予想を若干上回ったものの、概ね予想の範囲内の結果となった。 大企業製造業では、自動車の判断DIが前回比15ポイント低下と悪化が際立った。これは、ダイハツ工業や豊田自動織機での認証不正による自動車の生産・出荷停止の影響によるところが大きい。自動車生産低迷の影響は、関連業種にも及び、鉄鋼の景況悪化などが見られる。これは一時的な要因と言えるが、先行きの景況判断DIでは、自動車のDIが改善する中で全体のDIは下落見通しとなっており、輸出や国内消費の弱さの影響で、製造業の景況感は弱めのトレンドが続いている。 大企業非製造業の景況判断DIは改善したものの、先行き判断DIは7ポイントの予想外の大幅悪化となった。宿泊・飲食サービスが10ポイント悪化しており、インバウンド需要の拡大ペースが鈍っていることや、物価高による個人消費の弱さを反映しているとみられる。 ESPフォーキャスト調査(3月調査)によれば、2024年1-3月期の実質GDPは前期比年率-0.4%とマイナスが予想されている。2023年10-12月期の実質GDP2次速報値は、1次速報値のマイナスから前期比年率+0.4%と小幅プラスに上方修正されたが、2024年1-3月期は再びマイナスとなり、2023年4-6月期以降は、マイナス成長の基調が続いているとみられる。 1-3月期は、実質個人消費、実質設備投資、実質輸出がいずれも前期でマイナスの予想となっている。物価高、実質賃金低下が個人消費を抑制し、また、輸出の頭打ち傾向が、設備投資に悪影響を及ぼしているのが現状だ。
日本銀行の政策判断には影響はない
今回の短観は、日本銀行が3月19日にマイナス金利政策の解除を決めて最初の調査となった。そのため、日本銀行の追加利上げなど次の政策判断にどのように影響するか、という観点から今回の短観調査は注目された。実際には、日本銀行が追加の利上げを躊躇う要因にも、また追加の利上げを急ぐ要因にもならないものと考えられる。 まず、足もとの経済は力強さを欠いている状況であるが、これは、マイナス金利政策解除時と変わらない。他方、経済が腰折れする兆候も見られない。2024年度の設備投資計画も、全規模全産業で前年度比+4.0%と比較的堅調な滑り出しだ。 他方、製造業の需給判断DI(最近)は前回の2ポイントの低下と需給が緩和した状態はやや強まっている。雇用人員判断DIは1ポイントの低下(人出不足感が強まる)と小幅な改善となっており、この点から、物価上昇圧力が俄かに高まるリスクも小さい。 製造業の価格判断DIは、販売価格DI、仕入れ価格DIともに、現状、先行きはほぼ横ばいとなっており、物価環境に大きな変化は見られない。日本銀行は、賃金上昇分がサービス価格を中心に製品価格に転嫁されていき、より持続的な物価上昇につながるとの見通しを示しているが、非製造業の仕入れ価格判断DIは3ポイント改善、販売価格判断DIは2ポイントの改善と製造業を上回るものの、なお低位の改善にとどまっている。また先行き判断DIはほぼ横ばいだ。もちろん、今回の春闘の結果が企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすかについては、今後の統計で確認していく必要がある。 企業の物価見通しでは、全規模全産業の5年後の物価見通しは、+2.1%と従来から変化は見られない。中長期の物価見通しは2%程度で安定する一方、そこからさらに高まっていく兆候も見られない。