税流出側・東京23区ふるさと納税で新潮流―返礼品競争に一石投じた文京区
子ども宅食プロジェクト、予想を上回った納税額と支援申し込み
ふるさと納税を活用する同プロジェクトでは、ふるさと納税ブームを後押しした豪華な返礼品を用意しておりません。それにも関わらず、多額のふるさと納税が集まっているのです。 その背景には、プロジェクト開始時にマスコミなどが大きく取り上げて注目されたことも一因ですが、なによりもプロジェクトの趣旨に賛同する人たちが多い点が挙げられます。話題に取り上げられることがひと段落ついた今でも、文京区の子ども宅食プロジェクトを支援しようと、ふるさと納税する人が絶えないのです。 子ども宅食プロジェクトは、2カ月に1度150世帯に食料品を配送することを初年度の目標にしていました。それらにかかる費用は、約2000万円。ところが、ふるさと納税で5000万円を超える金額が集まっています。そのため、来年度以降も事業を継続することが決まっています。 文京区はNPOやボランティア団体と連携し、11月に初めて配送を行いました。「そこからクリアしなければならない課題も見えてきた」と担当者は言います。 文京区は都心部に位置しているため、農家などありません。そのため、食料支援の中でも重要なコメの確保が困難なのです。また、配送している食料を保管する倉庫や仕分けする作業場が足りず配送作業に支障をきたしています。 なによりも文京区が当初に想定していた申込数を大きく上回る458世帯から支援要請の申し込みがあったのです。想定外の支援申し込みを受けて、文京区は“キャパオーバー”を起こしてしまいました。 「文京区では支援要請のあった家庭には手を差し伸べるという方針にしています。そのため、当初の計画では来年度から配送は月1回にする予定でした。しかし、人手が足りないので来年度も隔月配送を継続し、支援の申し込みがあった世帯をできるだけカバーする方針から、配送軒数を増やしていく予定にしています」(同)。 文京区の子ども宅食プロジェクトは始まったばかりのため、行き届かない部分は残っています。しかし、文京区の担当者は「最終的には支援を1000世帯にまで広げたい」と目標を掲げます。 文京区が開始した子ども宅食プロジェクトは、豪華な返礼品を競い合う流れになっていたふるさと納税制度に一石を投じました。支援の広がりに、今後も注目が集まります。 小川裕夫=フリーランスライター