雇用保険改正でパートでも「週10時間以上」で雇用保険強制加入か。元公務員が「新しい雇用保険法」を徹底解説
2024年5月10日に「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立しました。改正される内容は雇用保険の適用拡大やリスキリング支援の拡充、育児休業給付の保険料の調整などです。 ◆【写真2枚】改正する雇用保険法のポイントを一覧表でサッと見 本格的な施行は2025年4月1日からですが、今年度から順次施行されていく予定です。 雇用保険法の改正により、私たちの雇用はどのように守られていくのでしょうか。 また、雇用保険法がこのタイミングで改正に至った理由はどこにあるのでしょうか。 この記事では、改正雇用保険法のポイントや法改正の理由、改正によって起こり得る問題点について解説します。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【改正】雇用保険法のポイント
改正雇用保険法のポイントは、以下のとおりです。 ●〈雇用保険の適用拡大〉(施行予定:2028年10月1日) ・被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更する。※これにより雇用保険の被保険者及び受給資格者になったとしても、求職者支援制度の対象からは除外されない ●〈自己都合離職者の給付制限の短縮・撤廃〉(施行予定:2025年4月1日) ・離職期間中や離職日前1年以内に、自ら教育訓練を行った場合には、原則2ヶ月間(5年以内に2回超の離職は3ヶ月)ある給付制限を解除する。 ・失業給付(基本手当)の受給時の原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。 ●〈教育訓練給付の拡充〉(施行予定:2024年10月1日) ・教育訓練給付金の給付率の上限を受講費用の70%から80%に引き上げる ●〈教育訓練休暇給付金の設立〉(施行予定:2025年10月1日) ・被保険者期間が5年以上ある人が教育訓練のための休暇(無給)を取得した場合に、離職した場合に支給される基本手当額と同額を給付する。給付日数は被保険者期間によって、90日、120日、150日のいずれかとなる。 ●〈育児休業給付の国庫負担割合引き上げ〉(施行日:公布日) ・国庫負担割合を現行の1/80から本則の1/8に引き上げる ●〈育児休業給付の保険料調整の仕組み導入〉(施行日:2025年4月1日) ・今後の保険財政の悪化に備えて、令和7年度からは0.5%に引き上げる改正を行う。ただし、当面は現行の保険料率0.4%に据え置き、保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入する。 特に大きな変化があったのは、雇用保険の適用拡大と、基本手当の給付制限の取り扱いです。 雇用保険は、2028年10月1日から被保険者の要件の一つである「1週間の所定労働時間」の下限を「20時間以上」から「10時間以上」に変更します。 これにより、パートなど非正規雇用者が雇用保険の加入対象となり、育児休業給付などを受けられるようになります。 また、2025年4月1日からは離職時に受け取れる基本手当の給付制限期間が緩和されます。 現在、自己都合で退職した場合の基本手当の給付制限期間は原則2ヶ月です。しかし、2025年4月からは制限期間が原則1ヶ月に短縮されます。 また、離職中や離職1年前のうちに教育訓練を受けた場合は、給付制限期間なく基本手当を受給できるようになります。 このほか、教育訓練給付の拡充や育児休業給付の財政運営に関する措置、就業促進手当の見直しなどが予定されています。 今回の雇用保険法の改正は、2024年3月30日の法成立以来約2年半ぶりです。 直近10年間では今回が5回目の改正となりました。なぜ雇用保険法はこれだけの頻度で改正されているのでしょうか。理由について、次章で解説します。