伝統工芸「萬古焼」を守れ 原料鉱石「ペタライト」、安定供給を模索
三重県北部の伝統工芸品・萬古焼(ばんこやき)の原料となる鉱石ペタライトの調達について生産者らは不安を抱えている。一時止まっていた輸入は3月から試験的に再開したとはいえ、不安定な状況は変わらず、価格も高騰している。県が誇る伝統工芸品を守るためにも、関係者の模索が続く。【原諒馬】 【写真で見る】食卓でおなじみの四日市萬古焼の土鍋 土鍋が主力の萬古焼で耐熱性を上げるために使われてきたペタライトは、輸入先のジンバブエで中国企業が2年前に鉱山を買収したことで一時、日本への輸出が止まった。ペタライトに含まれるリチウムを使う電気自動車の普及で、世界的な争奪戦の余波を受けてしまった。 だが、政府の働きかけが実り、3月からの試験輸入にこぎつけた。12月中旬に県を訪れた山中晋一駐ジンバブエ大使によると、ジンバブエ政府関係者らと交渉を重ね、山中大使自ら、萬古焼の土鍋を使って料理を振る舞ったこともあるという。 今後は本格的な輸入再開とともに、従来の3~4倍に跳ね上がっている価格の安定を目指す。山中大使はジンバブエ側に「安定供給をお願いしていきたい。供給会社にも可能であれば価格面の配慮と品質の確保をお願いできれば」と話した。 また、関係者によると、政府はジンバブエ以外の国からの供給網を模索し、サンプルを取り寄せて品質確認をしている。新たな供給網を確立できれば、ジンバブエ側への大きな「交渉材料」となりそうだ。 萬古焼の生産者は原料の研究などを進めてきたが、新たな製法は確立できておらず、ペタライトを必要としている。萬古陶磁器工業協同組合の熊本哲弥理事長は「来年以降、価格や品質の交渉を視野に進めていきたい」と述べた。