東南アジアに学ぶ観光戦略や新ビジネス支援 現地派遣の長野県職員が報告会
東南アジアなど海外で研修、ボランティア活動をしてきた長野県職員やJICAボランティアの女性たちが長野市で報告会を開き、現地の教育やインバウンド(外国人観光客)戦略、創業支援などのテーマで実情を報告しました。日本とは異なる発想の取り組みや、慣習の違いなどを通じて得ることも多く「長野県の事業や政策に成果を反映させたい」と話していました。
●世界6位の観光立国タイ
この報告会は17日に開かれ、長野県が16年度から始めた自主企画海外派遣研修事業で派遣した県職員2人とJICA(国際協力機構)ボランティア事業で派遣した3人の合わせて5人の女性が報告。このうち県の自主企画派遣事業は職員が自主的に決めたテーマに沿って現地で調査、研修しました。 自主企画事業でタイを訪れた長野地方事務所の横山紗央里(さおり)さんのテーマは「タイに学ぶインバウンド戦略」。統計によると2015年時点のタイの観光客数は日本の1・5倍の約3000万人で、観光収入は日本の1・8倍の446億ドルと世界6位の観光大国。調査のポイントは豊富な観光コンテンツ、レベルの高い観光行政のマーケティングやプロモーション、受け入れ環境の整備状況などに置きました。 一過性の観光としないために、バンコクでは料理を通じてタイ文化を楽しく学ぶ機会が設けられ、参加者の90%は外国人旅行者。市場での食材の買い物から始まり、伝統的な石臼の体験なども。高級ホテルでも同様の料理教室を開き好評です。 観光客が訪れることが少ないローカルな地域を巡るツアーや現地の人々との交流の機会も用意されています。一時ひどかった車の渋滞を緩和するため自転車利用の促進を図り自転車専用コースを設けるなど、環境の改善も進んでいます。 横山さんはタイのインバウンドについて、一般的な振興策とは異なる観光客の満足度を高める短期的戦略の「クオリティー・ツーリズム」と、観光地を持続的に保つ中・長期的戦略の「サスティナブル・ツーリズム」の2本柱で支えていると分析。「その根底には、観光は地域のためのツールであるという意識がタイ社会に広く根付き、タイ文化の要になっていることが分かりました」と締めくくりました。