東南アジアに学ぶ観光戦略や新ビジネス支援 現地派遣の長野県職員が報告会
●スタートアップ拠点のシンガポール
シンガポールを訪れた長野地方事務所の布山(ふやま)友里恵さんは商工観光課勤務でもあって「シンガポールにおける創業支援の取り組み」がテーマ。シンガポールは近年、東南アジア最大のスタートアップ(新ビジネスによる起業)拠点として浮上し、2016年のビジネス環境ランキングで世界トップ。その秘密を学びたいとの動機です。 報告によると、シンガポールではバイオ、情報通信技術などの分野の創業を8つの省庁が支援。大学の起業育成部門からも過去5年間に145社が立ち上がりました。大規模なコミュニティースペースには230社以上のスタートアップが入居し、500の政府、企業とつながりを持ちます。これらの起業の動きを一層加速させる政策が取られており、「大企業とスタートアップが互いの持つ問題を補い合うなど協調してエネルギー問題などにも取り組んでいる」と活発な動きを報告しました。
持続可能な観光地域づくりへの提案
こうした体験から、横山さんは「長野でも持続可能な観光地域づくりのために企業や地域の取り組みを発信し、その評価を。また、山岳高原リゾートとして持続可能なツーリズム先進地を目指し、宿泊施設や飲食店などに認証制度を」などと提案。 インバウンドの受け入れ環境の強化では、県民の英語などへの抵抗感をなくすために各国語の「指さし会話帳」の活用を提言。指さし会話帳は相手国語と日本語で単語や用件が書いてあり、互いに必要な言葉を指でさしてコミュニケーションを取ります。 布山さんは長野県の創業支援について「業種を絞って、徹底的に」、「大学に社会人も受講できるカリキュラムを」などを提案していました。
JICAボランティアも帰国報告
この日の報告会では、JICAボランティアの帰国隊員も現地での活動の成果を報告しました。松田香菜絵(かなえ)さんはルワンダで野菜栽培などに取り組みましたが、「約束しても2~3時間の遅れは普通」というルワンダ時間にびっくり。「笑顔を見せたり、歌など五感に訴えるコミュニケーションが大切だということが分かり、教えたいことを歌いながら覚えてもらうなどの工夫をしました」と話しました。 同じくカンボジアで小学校教育を担当した小山実央(みお)さんは「貧しくて学校を休まざるを得ずモチベーションが上がらない生徒もいる。しかし家族を大切にする気持ちはとても強く、病人が出ると家族中で世話をする。日本人の感覚とは別の強いつながりがあるようだ」と説明。小山さんがプレゼントしたリコーダーがうまく吹けなかった生徒が、帰国後、上手に吹けるようになった様子をネットの動画で伝えてくれたことも。「行ったかいがありました」と小山さん。 アルゼンチンで日系日本語学校の教師だった古川裕子(ゆうこ)さんは「日系子弟の日本語離れが進んでいる。教師も不足し、処遇も不安定。人手不足対策で派遣されたと一時勘違いされたこともあります」。それでも現地では長野への関心が高く、「長野から来たと言うとどこでも大歓迎されました」と振り返っていました。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説