ビットコインは今後「リスク回避資産」になるか?ウクライナ・中東情勢の悪化時に「逃避先」として注目された理由
■ 無国籍・デジタルだからこそ逃避先になる ロシア・ウクライナ戦争は、地政学リスクが暗号資産市場に与える影響をわかりやすく示す重要な事例である。 戦争勃発直後、ビットコインは他のリスク資産同様に大きく売られ、価格は一時的に急落した。しかし、戦争が長期化するにつれ、ビットコインは新たな役割を見出し、逃避資産としての価値を高めた。 ロシアでは国際的な制裁を受けた結果、ルーブルの価値が大幅に下落し、国内金融システムへの信頼が揺らいだ。そのため、一部のロシア国民や企業はビットコインを利用して資産を保全しようとした。また、ロシア政府も経済制裁を回避する手段として、ビットコインを含む暗号資産を用いた貿易決済や資金移動の可能性を検討し始めている。 一方、ウクライナではビットコインや他の暗号資産が軍事資金を調達する手段として利用された。ウクライナ政府は、暗号資産寄付サイトを通じて世界中から数十億円規模の支援金を集めることに成功しており、国家支援の新たな形としての暗号資産の役割を鮮明に示した。 ロシアとウクライナの事例のように、イスラエルとイランの関係においても、国家間の対立や制裁が強化されるにつれ、ビットコインのような無国籍かつデジタルな資産が重要な役割を果たす可能性は高い。特に、イランは長年にわたり国際的な制裁を受けているため、暗号資産を活用した経済的自立の手段を模索していることが考えられる。
■ ビットコインが分散投資に有効なワケ 地政学リスクが高まる中、投資家はビットコインをどう活用すべきかを再考する必要がある。ビットコインはボラティリティが高いものの、長期的にはデジタルゴールドとして成長していくことが期待されている。特に従来の資産とは異なる相関性を持つため、分散投資の一環として有効である。 例えば、株式市場が地政学リスクで下落しても、ビットコインは同じ動きをしない場合がある。これは、ビットコインが政府や金融機関の政策に左右されにくい特性を持っているためだ。この特性により、ビットコインはポートフォリオ全体のリスクを軽減する手段として活用が期待される。 また、ビットコインは2100万枚に供給が限定されており、インフレリスクを受けにくい点も魅力的である。地政学的リスクが高まると、国家間の対立や制裁が原因で通貨の価値が不安定になることがある。しかし、ビットコインはこうした外部要因に左右されにくく、不確実な経済環境でも価値の保存手段として利用されることが多い。 ただし、地政学リスクが高まる局面では暗号資産全体が売られやすいため、ビットコインと他の暗号資産を区別して考えることが重要である。同じ暗号資産でも、ビットコインへの資金逃避が進むことで、相対的な下落リスクを抑えることができる。実際、市場の不安定時には、暗号資産市場全体に占めるビットコインの時価総額割合が上昇する傾向がある。 結論として、ビットコインは地政学リスクが高まると短期的に下落しやすいものの、状況が落ち着いた後にはリスク回避資産として再評価されることが多い。 今後、イランとイスラエルの対立がさらに激化すれば、ビットコインは株式と同様に一時的な売り圧力を受ける可能性がある。しかし、地政学的リスクがより深刻化すれば、投資家が逃避先としてビットコインに再び注目し、金と同様に価値を伸ばす展開が考えられる。 ※実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。
松嶋 真倫