「残業代ゼロ」はサラリーマンにとってもメリットがある
過労死等の割合は正規職員が圧倒的に多い
政府の新しい成長戦略の一つとして打ち出された「新たな労働時間制度」は「残業代ゼロ」とも呼ばれ、強い反対があります。残業代が減らされる一方で労働時間は減少せず、労働環境がますます悪化するという危惧があるためでしょう。 けれども、今の制度のままで労働者は守られているのかというとそうでもありません。むしろ逆です。過労死等事案の労災補償状況をまとめたものとして、厚生労働省「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」があり、6月27日に平成25年度の状況が公表されました。過労死等は非正規よりも正規職員の方が圧倒的に多い割合となっています。 このとりまとめをみると、「脳・心臓疾患」で請求件数と決定件数ともに一番多いのは50代です。また、平成25年度の決定件数683のうち、591件は正規職員によるものとなっています。加えて、時間外労働時間が「80時間以上~100時間未満」から支給決定件数が急増しており、残業等の過重労働が原因であることもわかります。 「精神障害」では30代と40代がほぼ同じ件数で多くなっています。こちらは時間外労働時間との顕著な関係はみられません。しかし、全体の(決定)件数1193件のうち正規職員は999件とやはり多くなっています。 過労等の状況に直面しているのは非正規の若者よりも、正規職員の中高年、すなわち一般的な意味のサラリーマンが多くなっています。ここから浮かび上がってくる事実は、中高年の正規職員は、非正規雇用に比べて雇用保護が強い代わりに、厳しい労働環境の中で堪え忍んでいるということです。精神的な重圧は30代以降から、身体的な意味の過労は40代以降でとくに多くなっています。 あなたの置かれている状況はどうでしょうか。
40代以上男性(有業者)の睡眠時間が減少している
残業の実態はサービス残業があると統計上に現れないためわかりにくいのですが、5年に1度行われる「社会生活基本調査」では仕事時間や睡眠時間も調査されており、生活面からそれを把握することができます。 図は男性(有業者)の年齢階級別でみた週の睡眠時間と仕事時間の推移を示しています。 2011年までにかけて、30代までの睡眠時間が横ばいなのに対して、40代以上では減少していることがわかります。生活スタイルの変化もありますが、若年層との違いの部分は仕事時間が増えたためと考えられます。とくに2001年以降、40代以降の顕著な仕事時間の増加が生じました。40代では時短の影響を超えて、バブル期以上の仕事量になっているはずです。 2001年以降といえば、ちょうど非正規雇用が増えた時期です。とくに若年層で大きく増加しました。一方で、40代以降は比較的その変化が緩やかでした。すでに正規職員として雇用されていた人が多かったためです。