自民総裁選、始まった論戦 安倍氏と石破氏の対決軸
自民党総裁選の本格的な論戦が始まった。9月7日に告示されていたが、台風21号や北海道地震と大きな災害が相次いだことを受けて、20日の投開票日はそのままで、告示日を含む3日間について選挙運動を自粛していた。週が明けた10日、東京・永田町の自民党本部では、所属国会議員らに向けた「所見演説発表会」と候補者が記者からの質問に応える「共同記者会見」が行われた。連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)と3度目の総裁選出馬となる石破茂元幹事長が、経済政策や社会保障、憲法改正などについて持論を語った。
●国内法と国際法の間
「この機会なので、政府として反論させていただく」。共同会見の終盤、こう切り出したのは安倍首相だった。 憲法9条の改正をめぐり、安倍首相は、戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を維持したまま、自衛隊の存在を明記する改憲方針を示している。この日も「われわれは憲法に、日本の平和と独立を守ること、そして自衛隊と、しっかりと明記をしていきたい」と語った。 それに対し、党内でまとめた憲法改正草案をもとに9条2項削除を主張する石破氏は、「自衛隊が違憲ではないかという議論は(石破氏への国会質疑で)一度もなかった。むしろ問われたのは、この船は必要最小限度なのか、この行動は交戦権に当たるのか。『必要最小限度だから戦力ではない』とか、『国内法的には軍隊ではないが、国外的には軍隊』だと、そんなことを聞いて誰か分かるのか。きちんと書かかければいけないのは、国の独立を守る組織である、国際法に則って行動する組織である、ということ」と疑問を投げかけた。 冒頭の反論は、こうした石破氏の発言に対するもので、安倍首相は「日本は自衛権は行使できる。その中で必要最小限度ではあるが、武力行使できるということ。自衛権については『ハーグ陸戦条約』上も、『ジュネーブ条約』上も、何でもやっていいというわけではない。制約が掛かっている。それが政府の公式見解。自衛隊は国内の憲法上、軍隊ではないという見解を採っているが、外国から見れば軍隊であることは明確であり、当然捕虜となれば捕虜としての扱いを受ける。『ジュネーブ条約』上、あるいは『ハーグ陸戦条約』上のさまざまな権利は行使できるというのが政府の考え方」と述べた。