通信と連携し金利競争 auじぶん銀行社長「メガバンク目指す」
ネット銀行大手、auじぶん銀行の田中健二社長は毎日新聞の取材に応じ、住宅ローンや預金のサービスで顧客に有利な金利を提供し、経済圏の拡大を図る考えを示した。預金残高はネット銀行で3位。田中氏は「追う立場なので力を入れていきたい」と語り、グループのKDDIと連携し、金利競争に正面から挑む。 ――預金残高は2024年9月末時点で4・3兆円と、直近5年ほどで約3倍に増えています。 ◆KDDIグループの力が大きい。携帯電話の料金プラン「auマネ活プラン」で預金金利を上乗せすることで、預金をしっかり獲得できている。銀行は預金があってナンボの世界。業界で存在感を出せていると思う。 ――「金利のある世界」が到来しつつあります。 ◆預金の獲得競争が激しくなっている。各ネット銀の顧客の多くは、金利の高い銀行を探している。一方、依然として預金を動かさない人も大量にいる。ゆうちょ銀行や地銀に大きなお金を預けているような、年齢層の高い人たちだ。預金獲得に向け、さまざまな広告媒体を駆使して働きかけたい。 ――伝統的な銀行とはどのように差別化しますか。 ◆我々の強みは実店舗がなく、固定費がかからない点だ。システムはウェブを通じて全国の顧客が利用できる。コスト効率の観点で明らかな強みだ。地銀にとってはやっかいな存在だと思う。 ――変動型の住宅ローンの最優遇金利は、業界内で最低水準です。今後も顧客獲得競争は続けますか。 ◆そこが我々の売りだ。すべてのサービスが平均点になったら、何の特徴もなくなってしまう。とがっているものが必要だ。 ――住宅ローンに伸びしろがありますか。 ◆地方都市が全然攻められていないので、まだまだやっていける。変動型の返済期間は35年が一般的だが、25年1月から50年のローンを取り扱う。これを武器に地方に入っていく。物件を見る限り、地方の不動産市況が今後崩れるとは考えていない。 ――三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とKDDIの共同出資でしたが、資本関係の再編で1月末にKDDIの完全子会社になります。 ◆MUFGは徐々に当社の出資比率を減らしており、いつかこうなると思っていた。今後はMUFG側に相談しなくてよくなるため、(意思決定の)スピード感は上がる。 ――auカブコム証券はMUFGの完全子会社となります。証券と銀行の口座連携で預金金利を上乗せするサービスはどうなりますか。 ◆見直すことは考えていない。証券と関係を切ってしまうと互いに損になる。相互に送客できているため、やめる必要はない。 ――将来的な目標を教えてください。 ◆具体的な時期は設定していないが、グループ内には「デジタルメガバンク」構想がある。ゆくゆくはメガバンクの個人預金口座に見劣りしない、3000万口座の規模に成長していかないといけない。足元の口座数は600万超なので、徐々に階段を上っていく必要がある。個人向け(サービス)の「メガバンク」になりたい。 ――楽天銀行は1600万超の口座を持っています。 ◆楽天は(ネット通販を通じて)国民全体を相手にしていると言える。KDDIグループとしてはPonta(ポンタ)との連携がある。国民全体を相手にするポイントサービスなので、攻める余地がある。我々は追う立場。金利もポイントも注力していく。【聞き手・浅川大樹】