あの運命の最終回に何があったのか…WBO世界バンタム級王者の武居由樹と比嘉大吾の名勝負の裏を追跡…元K-1王者は那須川天心戦を熱望し比嘉は引退を示唆した
5月6日に東京ドームでタイトルを獲得したジェイソン・モロニー(豪州)戦は、最終ラウンドにもう立っているだけがやっとの苦しいラウンドを乗り越えての辛勝だった。だが、今回はうって変わって、その12ラウンドに強さを見せた。 なぜなのか? 八重樫トレーナーは、試合前から「あれはガス欠に見えたかもしれないが、実は違うんです。その理由はわかったし、解決した」と自信を持っていた。 一夜明け会見で後日談としてその理由を明かした。 「栄養素の問題です。ナトリウムが足りなかったんです。それで動けなかった。ナトリウムを汗と一緒に排出しやすいタイプと、そうでもないタイプがいて、まちまちなんですけど、武居は排出しやすいタイプだったんです」 しかも、試合当日、武居は水しか飲まなかった。八重樫は、計量後のリカバリー、そして試合前にも電解質のナトリウムを含んだ水分を武居にとらせた。 「試合前にナトリウムを入れると、試合の間の36分間は持つんです」 八重樫トレーナーは、現役時代からサプリメント博士で知られ、井上尚弥らにも指南してきた。肉体のメカニズムに詳しく、知識を学ぶと同時に、自らの肉体を使って“人体実験”もしてきた。その見識と武居のメンタルの強さがリングして、あの勝負の最終ラウンドが演出された。武居が言う。 「大吾さんの気持ちの強さを感じた。乗り越えられてはいない。ただ、その気持ちの強さに負けないようにした」 試合後、リング上でインタビューを受けた武居は、最後に「天心君。10月の試合、頑張ってください」と突然、那須川天心の名前を出して呼びかけた。 事実上の王者からの挑戦者指名だった。 天心は10月13、24日の2日間、有明アリーナで行われる7大世界戦のプラスアルファとして2日目の14日にWBOアジアパシフィック・バンタム級王座決定戦に挑む。ボクシング転向5戦目にして23歳の9戦全勝のジェルウィン・アシロ(フィリピン)と対戦する。 荒っぽい強敵だが、勝てば、これが世界戦へのパスポートとなる。すでに世界ランキングもWBA、WBCで3位、武居のWBOでも10位にランキングされている。帝拳サイドは、世界挑戦は早くても来年の秋以降だと考えている。大橋会長は「今やったら天心に勝てない」という。ただ天心が地域タイトルを獲得すれば、否が応でも「武居×天心」の元キックボクサー同志の対戦の気運は高まるだろう。 「ファンの方から天心戦を見たいとの声が大きい。ボクシングに転向する前からずっとやりたかった相手なので軽く名前を出させてもらった」 武居が天心の名前を出した理由を明かした。
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