アベノミクス以降で最も弱い「世界景気の瞬間風速」に懸念
「米中貿易戦争」など不透明感が増す世界経済の先行きについて、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストはある指標に着目し、「景気の減速が予想以上に止まらず不気味」と市場への影響の広がりを懸念します。藤代氏の解説です。
グローバル製造業PMI「50割れ」相次ぐ
世界経済の「瞬間風速」を計測する上で重宝されているグローバル製造業PMI(Purchasing Managers’Index=購買担当者景気指数)の低下が止まりません。景気の方向感を決める製造業の調子が悪いと、先々の世界経済が一段と減速する可能性が高まるため要注意です。現在のところ株価は、米国の金融政策がハト派方向へと傾斜したことで金融面からの追い風を受けていますが、実体経済の減速が鮮明になれば、再び下落する可能性があります。 1月のグローバル製造業PMIは50.7へと12月から0.7ポイント低下し、2016年5月以来の低水準に落ち込み、好不況の分岐点とされている50に接近しています。最後に50を割ったのは2012年11月ですから、この指標で計測した世界経済における現在の景気の瞬間風速はアベノミクス開始以降で最も弱い、ということになります。国別では、米国が54.9と高水準を維持する反面、製造業が集積するドイツが49.7、日本が50.3だったほか、中国(48.3)、韓国(48.3)、台湾(47.5)などの国で50割れが相次いでいます。 グローバル製造業PMIは、企業に当該月の「生産高」「新規受注」「雇用」「在庫」などが前月に比べてどう変化したかを問い、それらの数値を合成してヘッドラインの数値を作成しています。したがって、サブ項目で注目度が高いのは、景気に先行性があると考えれる「新規受注」です。その新規受注は1月に50.1へと低下しました。目下の水準は直近ボトムの2016年5月を下回り、12年11月以来となる50割れが視野に入っています。また、新規受注と在庫の比をみる新規受注・在庫バランスは一段と悪化し、先行きの生産がさらに落ち込む可能性を示唆しています。こうして考えると、2月はヘッドラインの数値が50を割れても不思議ではありません。