『あのクズ』ほこ美の真剣勝負が海里の心を着火 玉森裕太「俺はほっこーが好き」の破壊力
図らずしもほこ美(奈緒)と海里(玉森裕太)それぞれが“自分との闘い”に逃げずに向き合うことになった『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)第6話。 【写真】ほこ美(奈緒)にキスをしようとする海里(玉森裕太) 出稽古の話が舞い込み初めて練習試合に挑んだほこ美だがまったく歯が立たない。会長(渡部篤郎)からは「綺麗なボクシングをしようとしすぎ(中略)逃げるな」という叱咤激励をもらう。 一方、ほこ美からの一世一代の告白を受けるも「付き合う? そんな必要ある?」としらばっくれていた海里が実はこれまでの女性関係を清算し始める。さらに、彼にとって大地(大東駿介)のボクシングを見た時ぶりの衝撃的な出会いが訪れる。スポーツカメラマン・朝倉修太郎(安井順平)の写真を見て、海里の中にはカメラと真剣に向き合いたい思いが沸々と湧き上がってくる。しかし海里もまた朝倉から「よく撮れてる、でもそれだけだね。君の写真は被写体を見れてない(中略)もっと被写体と向き合うんだ、逃げるな」というアドバイスを受けていた。 海里を殴り飛ばしたい一心でいつの間にかボクシングを始めることになったほこ美と、同居人の悟(倉悠貴)からの紹介でとりあえず生活のためにカメラを始めた海里。いずれも昔からやりたかったことでもなければ、流れや成り行きに任せていつの間にか半ば巻き込まれる形で始めることになっていた対象。でもいつしか気付かぬうちに、それぞれにとってそれは「好き」だと言えるものになっていた。 実はほこ美に好意を寄せている大葉(小関裕太)からの「好きなんだ、写真?」というふとした問いかけが海里にそのことを自覚させ「あの頃見ていた夢とは違うけど挫折したからこそ今がある」という言葉に海里は自分の本心やこれまでを認められるきっかけを得た。そもそも朝倉との出会いを間接的にもたらしたのも大葉だった。小関裕太といえば『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)では杉咲花演じる主人公の初恋相手役を務め、皆から慕われる好青年という役どころは本作の大葉と共通していた。ただ、本作での大葉の方がより不器用で打算的なところがなく応援したくなってしまう。ゆい(岡崎紗絵)との掛け合いなんかは本当に憎めないし、ほこ美と海里を見守るこの2人の幸せも願わずにはいられなくなる。 ただ、傷ついていない振りをして死んだように生きていた冷え切った海里の心を最終的に後押しし着火させるのは、やはりここでもほこ美だ。 「好きなんだね、ボクシング」という海里の言葉に「はい、だからもう逃げたくないんです」と何の恥じらいも衒いもなく正々堂々答えるほこ美はひたすらに眩しい。「どんなに殴られて無様でも良いから前に進む、相手と向き合うことから逃げない」という言葉通りをあの小さな身体で体現しようとしているほこ美に、海里もすかして生きることがバカバカしくなったのかもしれない。自分のことが信用できず、自分のことになると途端に「俺なんて」と過小評価ばかりしてしまう海里も、ほこ美に対してだけはそんなマイナスな言葉を掛けたくないと思うのだろう。「負けたと思ったところからが勝負だ、自分との勝負だ」という海里からの声援は真剣勝負に挑むほこ美だからこそ、固く閉ざされた海里の心から引き出せた祈りにも近い言葉だったのだろう。 そして海里が逃げないと決めたのは、カメラへの情熱だけではなかった。ほこ美の気持ちからも逃げないことを宣言し「俺はほっこーが好き」と面と向かって伝えた。 ボクシングのプロテストを受ける決意をしたほこ美が漏らした「私がプロになったら私の試合の写真撮ってください」という2人の夢が叶い重なり合いますように。「今までしてきたことはチャラにはできない。必ずいつかしっぺ返しがくるから」という海里の遊び相手だった女性の声や、悟の「今まで通りでいいじゃないですか?」という残響も、どうかどうか跳ね除けられますように。
佳香(かこ)