名店に学んだ25年前 ダイイチの「おはぎ」が甘すぎない理由
専門の職人を置かず、手作りにこだわり
あんこの製造以外は、各店の厨房内で人の手で調理される。ただ、専門の職人はいない。店舗で違いはあるが、惣菜係が交代で担当する。帯広地区の旗艦店・白樺店の惣菜係、山田直矢さん(34)が「おはぎは惣菜の顔。惣菜に配属されると作り方を学ぶ研修がある」と教えてくれた。 同社はさらなる増産対応ができるよう、今夏までに惣菜センターに冷蔵庫の増設などを計画している。 折しもきょう11日、佐市は仙台の地元紙などに、ダイイチにその味を伝授した当時の社長、佐藤啓二さんの死去(享年89歳、会長)を公表した。若園社長(71)は「おはぎは当社が大切にするこだわりの象徴。コア商品に成長できた源流は、手間を惜しまない、さいちさんの教え。店舗が増えても、当初からのレシピや調理法を守り、手作りにこだわり続けたい」と述べ、決意を新たにしている。
数十秒もかからず1個のおはぎを製造
現在、おはぎの売り上げが最も多いのは札幌ブロック(7店)で、販売金額は全体の約60%を占める。帯広ブロックは25%ほど。同社によると、すすきの店(札幌)が昨年11月末に開店した直後は、1日2000個作っても足りないほどの引き合いがあったという。十勝発のおはぎが、札幌圏でも確実に受け入れられている証左だ。 看板商品作りの現場を見るため、5月27日に白樺店で開店前の厨房などを取材した。数多くの商品を予定通りに仕上げるため、“戦場”さながらのその一角で、おはぎは作られていた。 この日は昼までに400個を作る計画。前日(日曜日)の6割弱だ。白衣に白帽、マスク、手袋姿のスタッフが慣れた手つきで規定分量の半殺し(少しつぶした)状態の炊いたもち米を計量器にとりわけ、さっと丸める。その横から別のスタッフがあんこでくるんでいく。1個完成するのに数十秒もかからない。 おはぎを担当し、まだ数カ月というスタッフは「マニュアル化されているので、すぐに慣れた。人気商品を扱っているという緊張感を持って作業している」と話してくれた。 開店時には、売れ筋の1個~3個入りパックのおはぎなどが惣菜売り場正面の棚にびっしりと並んだ。市内の建設会社経営の田澤米子さん(89)は夫と同店に立ち寄り、2個入りパック2つをかごに入れた。「自分でも作るが、忙しい時、命日などによく買う。甘すぎない優しい味」。週1回は購入する帯広市の主婦、新谷ゆかりさん(62)も「主人があんこ好き。手作り感があってなじみの味」という。