名店に学んだ25年前 ダイイチの「おはぎ」が甘すぎない理由
惣菜の売り上げ長年1位
「ボリュームがあるのに、気づいたら1個完食していた」「甘い物は苦手なのに食べられる」「優しい味」「手作り感」―。 食品スーパー・ダイイチ(帯広市、若園清社長)の人気惣菜「おはぎ」。同社のおはぎが幅広い層に受け入れられている理由を、売り場に来る客が的確に言い表してくれる。同社の執行役員で惣菜部門を統括する商品第二部長の工藤伸昭さん(55)は「通常のスーパーは、惣菜の売り上げ1位は唐揚げが多い。でも当社は長年おはぎが単品トップ。文字通り、看板商品」と胸を張る。 甘さ控えめ、たっぷりの量の粒あんが、もち米をふんわりと下まで包み込んでいるのが特徴。1個135円(税別、帯広ブロック)。道内全23店で扱っている。「あんこだけほしい」という注文も寄せられるほどだ。2022年には人気テレビ番組「マツコの知らない世界」で紹介された。今年3月20日の彼岸中日には、1日で全店合計約2万5000個を販売。閉店前に品切れした店が続出したという。
仙台市の惣菜の名店で学んだ味
ダイイチがおはぎの販売を始めたのは約25年前。宮城・仙台市秋保温泉地区にあるスーパーで、おはぎを筆頭に惣菜の名店として知られる主婦の店「さいち」(株式会社佐市運営)で学んだ味をレシピにした。 当時、全社的に惣菜スタッフらをさいちに何人も派遣し、技術を学ばせた。研修を経験した数少ない現役社員、猫山樹里さん(44)=惣菜課長・旭川ブロック=は「白衣と長靴を持参して臨んだ。当時の(佐市の)社長や専務は惜しみなく技術を教えてくれた」と振り返る。 おはぎの原材料は十勝産小豆と、道産が主軸のもち米、塩。配合は企業秘密だが、あんこともち米の比率は2対1。あんこは、本社横にある惣菜センター(帯広市西20南1)で毎日100キロ炊ける大釜(おおがま)で製造し、全店にチルド輸送されている。1日平均4回、多い日は10回も繰り返す。年間の小豆使用量は35トンに及ぶ。 同社のおはぎは消費期限が製造から18時間と、日持ちしない。同社惣菜課長・帯広ブロックの今吉茂郎さん(54)は「砂糖の量をもっと増やしたり、添加物を加えたりすれば保存期間は伸びるが、そうするとこの味は出せない」と説明する。