<春に挑む・国学院久我山センバツへ>/下 全員野球、快進撃誓う イチローさんの指導生かせ /東京
東京で4年ぶりに10センチ以上の積雪が観測された今年1月6日。杉並区の国学院久我山のグラウンドで、新年最初の練習が始まった。耳を真っ赤にしながら練習する選手たちを見て、「早くみんなと野球をしたいと思っていた」と尾崎直輝監督が笑顔をみせた。 ◇ 昨年11月20日。都大会優勝を果たして臨んだ明治神宮大会1回戦は、東北大会を制した花巻東(岩手)との対戦となった。一回、全国屈指の注目選手・佐々木麟太郎に本塁打を打たれ、先制を許す。「これが全国か」。出はなをくじかれる形となったが、その後は互角の戦いを繰り広げ、下川辺隼人(2年)の本塁打も飛び出し、六回時点で3―2とリード。自分たちの野球が全国でも通用すると感じ取ることができた。 しかし、七回。投手陣が崩れて4点を失い、逆転を許した。そのまま反撃できず敗退。「全国慣れしているチームとの差が出た」と尾崎監督は振り返る。 神宮大会後、野球部のボードには「チームを創り直す」「全国で勝つチームへ」と目標が書かれた。尾崎監督も「秋季大会優勝、神宮大会出場で満足してほしくない」と選手たちを見つめる。 ◇ 同月29、30日。「レジェンド」が同校のグラウンドを訪れた。オリックスや米大リーグのマリナーズなどで活躍したイチローさん(48)=本名・鈴木一朗=だ。昨夏引退した部員、田村優樹さん(3年)が出した手紙に応えてくれたのだった。イチローさんは、選手たちに走塁時のリードの取り方などを教え、一人一人の質問にも丁寧に答えた。 「イチローさんが来たことで、みんなのギアが一つ上がり、練習への姿勢も変わった。教わったことを自分たちの力にして、試合で生かす。それが恩返しになる」と主将の上田太陽(2年)は意気込む。 国学院久我山のセンバツ出場は過去3回あるが、いずれも初戦敗退だ。今回こそ「春の1勝」をクリアし、快進撃を狙う。「全国で勝利するためにできる準備は最大限する」と尾崎監督は力を込める。モットーとしてきた“全員野球”でつかんだ切符を手に、新たな挑戦が始まる。【小林遥】 〔多摩版〕