キング・森岡薫、現役引退宣言して挑む“ラストチャレンジ”【STAR is BACK|Fリーグ】
牙を抜かれたわけじゃないよ
──今シーズンは選手としてプレーしたあと、来年から本格的に、町田のフロントに入るということでしょうか? そうです。 ──町田にいた時はプロ契約だったと思いますが、今回は? 今回は自分から売り込んだ形でもあるので、アマチュア契約です。自分でエステサロンやフットサルスクールを経営しているので、そういう意味ではフットサル選手として稼げなくてもなんとかなる。 ──家族から反対はされなかったんでしょうか? まったく。うちの奥さんはずっと「このまま終わっていいの?」という話をしてくれていたので、町田に選手として復帰すると伝えた時は、たぶん一番喜んでくれて「私も仕事を頑張るし、1年くらいなら生活も大丈夫だから、しっかり頑張って」と背中を押してくれました。 ──さすが、元トップ選手だった奥様……。 僕、今は一人暮らししてるんです。町田は朝練習だから、家から通うのはきついので。家族には本当に感謝しているし、だからこそ自己満足みたいにするつもりはない。森岡薫として今できる最高のプレーを見せたい。 ──45歳での一人暮らし! こうして朝早く起きて練習をして、今までやったこともないようなケアを取り入れて全力を尽くすのは、もう一度呼んでくれたクラブのため、若い選手のため、シュウさんのためでもある。 ありきたりな言葉になってしまうけど、この1年でフットサルに恩返しできたらなと思っています。 ──45歳の森岡選手から見たら、町田の選手はほとんどが20歳ぐらい年下になります。どんな風にコミュニケーションをとっていますか。 僕がこんな風貌だから怖いかもしれないけど(笑)、若手の選手たちにはなにか気になることがあったら聞いてこいと伝えています。 町田にはバナナ(クレパウジ・ヴィニシウス)、シュウさん、ヨシくん(前田喜史コーチ)、治くん(難波田治コーチ)、石渡くん(石渡良太GKコーチ)とお手本がたくさんいる。 でも、僕らが言うことすべてじゃないから、いろんな人の意見を聞いて、いろいろ拾ってもらって、自分のものにしてほしいなって思います。 ──レジェンドからのアドバイスは、若手にとっては”金言”になりそうです。 僕がよくいうのは、一番の敵は“自分”だぞって。 ──どういうことですか? 町田を退団した後、スペインに行った時、自分のプレーがうまく出せなくて、試合に出られなくなった経験があるんです。ボールを簡単にとられたり、シュートも打てず、平凡な選手になっていった。 「こんなのは森岡薫じゃない」と思う一方で、「40歳になったから仕方がないよな」と思う自分もいる。メンタルコントロールができなくて、かなり悩みました。 若手の頃は特に、良い時と悪い時の波はどうしてもあるもの。そういう時に、どうすればいいかというのは自分の経験を話していきたいです。 ──ただ、森岡選手はコーチではなく、今年1年は1人の選手として彼らと勝負をしなくちゃいけない立場でもある。 オーシャンカップの時は、ずっとベンチにいて、声を出すっていう経験をしました。Fリーグでは怪我以外ではピッチに立っているのは当たり前だったから、キツイなって思うこともありました。 でも、さっきも言ったみたいに義理とか人情とか、今までの結果でプレーしたいわけではないから、過去はもうリセットしてやってるつもりです。 「特別扱いをしない」とシュウさんにも言われているし、それを自分で望んだわけなので。この環境で、いち選手としてアピールしようという気持ちです。 ──フットサル界の“キング”として君臨していた過去と比較されることについては? みんなのなかにある森岡薫のイメージは28~33歳くらいのはず。前までだったら比較されるのはたぶん嫌だったと思うけど、今は比較されるのはしょうがないという気持ちでやってます。 ただ、「こんなものか」ってガッカリされるのは、悔しいんです(笑)。 シュウさんによく「怪我はしてほしくないし、そんなに追い込まなくても」って言われるけど、怪我を怖がって力を抜くことはできない。僕ははそういう性格だし、同じ土俵でやってるなら、同じことをしないと。 エゴイストではなくなったかもしれない。でも、牙を抜かれたわけじゃないからね。