パソコン作業は開始30分で集中力が下がり始める…前後で5分休憩がベター【科学が証明!ストレス解消法】
【科学が証明!ストレス解消法】#194 ひとつの作業ばかりしていると、集中力は必ず低下します。「仕事のやめどころがわからない」といった状態も集中しているように感じるかもしれません。しかし、仕事に対する集中力は時間とともに確実に低下していくことは、数多くの研究でも明らかになっています。 疲労の謎がここまで分かった(3)なぜ軽い運動が疲労を減少させるのか…酵素の産生を増やす 集中力が低下すれば、当然、作業効率も下がります。米マサチューセッツ工科大学のアリエリーと欧州経営大学院のヴェルテンブロックによれば、成人の集中力が続く時間は20分程度とのことで、好きなものに対する集中力であれば長く続くと付言しています。また、聴覚、視覚、記憶など何をもって集中力が続いていると判断するかによっても変わってくるといいます。 確実に言えることは、ある程度作業をしたら休まなければならないということです。長く仕事をしていれば、それだけ体力を使うためコンディションは低下します。仮に、「私は体力に自信があるから」といった鋼の肉体を持っていたとしても、集中力を持続させるのは難しいのです。 ここでもうひとつの集中力に関する研究を紹介します。関西大学の吉村と友田の研究(1993年)によると、パソコンの画面上での作業を開始してから30分ほどすると集中力が低下し始めることが分かりました。平均値で60分経過した頃には、疲労による影響が明確に見られたそうで、前記2つの研究結果を踏まえると、30分前後でいったん休憩を取るのがベターということになります。30分ほど何かに没頭し集中したら、5分ほど休憩を取ることを心がけてみてください。 先ほど、鋼の肉体を持っていたとしても集中力は続かないと説明しました。その理由は、集中力を支えている基盤は、脳のワーキングメモリーによるからです。ワーキングメモリーは、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する前頭前野の働きですが、集中力は情報の保持と処理を効果的に行うために必要とされます。そのため、ワーキングメモリーがパンクすると、集中力も続かなくなってしまうというわけです。 ということは、ワーキングメモリーを鍛えることができれば、集中力も向上するのでは? と考えられるわけですが、Nバック課題と呼ばれる認知トレーニングを行うことで、多少なりとも効果があるといわれています。 Nバック課題は、一定の間隔で異なる文字が次々に表示される画面を見ながら、N個前に表示されたものと現在表示されている文字が一致している際に応答するというものです。例えば3個前と設定し、「A、B、C、A、U、Y、I、U」という無機質のアルファベットが表示された場合は、一致したAとUに応答するという具合です。 Nバック課題は、現在スマホのアプリとしても存在し、気軽に楽しむことができます。効果に関してはさまざまな意見がありますが、「信じる者は救われる」ともいいますから、トライしてみる価値はあるかもしれませんよ。 (堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)