「“なんかいい”通天閣」南海電鉄と資本提携・子会社に「ポスト大阪・関西万博、シナジー効果アップ」
大阪・新世界の観光名所「通天閣」を保有・運営する通天閣観光(大阪市浪速区)と南海電気鉄道(本社・大阪市中央区)が資本提携に合意した。4日に共同会見して明らかにした。 【画像】通天閣、あらたな歴史を刻む日 通天閣観光は南海グループに加入する。 両社は今年(2024年)5月から交渉を進め、通天閣が株式の70.8%を譲渡し、南海グループの傘下に入ることになった。譲渡(売却)額は非公表。 通天閣は新型コロナウイルス感染拡大の収束を受け、インバウンド(訪日外国人客)を中心とした入場者が急激に回復。2023年4月~2024年3月期は、コロナ禍前を超える約137万人が訪れた。 こうした“うれしい悲鳴”が聞かれる反面、来場者急増に対応できるインフラ整備が困難になっている。必要な設備投資などを行うために、より資金力のある企業グループへの加入が必要と判断した。 通天閣観光・高井隆光社長は、「南海さんからは『クーリングオフはないで~』と言われている。それぐらい、堅い約束のもと進めてきた。一部では『通天閣が無くなってしまうかもしれない』あるいは『通天閣という名前が変更されるのではないか』といった声も聞かれたが、通天閣はこれからも通天閣。引き続き大阪のランドマークとしてお客様、地域の皆さまに愛される存在。日立さんのネオンも変わりません!」と話した。 「やるべきことは、尽くしてきましたよ」。 高井社長はしみじみ振り返った。新型コロナウイルスの猛威は、世の中の営みを止めた。「もう、あかん」。 誰もが絶望的になるムード、新世界は“ゴーストタウン”になった。誰もいない通天閣…。 新型コロナウイルス感染拡大を受け、大阪府は2020年5月5日に独自の警戒基準「大阪モデル」を発表。 通天閣観光と日立製作所は大阪府からの要請を受け、警戒基準の到達レベルを通天閣の“色”で周知。 赤色は警戒レベル、黄色は注意喚起レベル、緑色は基準内。 通天閣では、そうしたコロナ禍初期の2020年春、いち早く地下1階の「通天閣ワクワクランド」で、全国の観光スポットで売れ残った土産菓子を取り寄せて格安で販売した。 さらに「タワースライダー」「ダイブ&ウォーク」などのアトラクションを次々に整備、来たるべき“ポスト・コロナ”に備えた。 誰が見ても順風満帆の通天閣、人の波が絶えない新世界のランドマークなのに…。 高井社長は手綱を緩めない。「歴史を振り返ると、1970年大阪万博で盛り上がったが、その揺り戻しでお客さまが遠のいた。さらに70年代は、近隣の西成の暴動など治安の悪化が進んだのも、新世界の衰退に拍車をかけた。時はめぐり、いまやインバウンドがたくさん来られ、賑わいをみせているが、ポスト大阪・関西万博を考えて、さらなる手を打たなけわれば。南海グループとして、シナジー効果を高めたい」と気合を入れる。 南海電鉄は、沿線のまちづくりを通じて、沿線全体の活性化を図ってきた。 特にエリアマネジメント戦略として、南海の拠点・難波駅を核とす「グレーターなんば」という空間創造を掲げ、なんば広場の整備や、通天閣への玄関口・新今宮駅周辺の賑わい創出などを進める。 南海電鉄はグループ経営の効率改善のため、完全子会社の泉北高速鉄道を来年(2025年)4月に吸収合併するが、その後、鉄道事業を分社化する。沿線人口の減少が著しいことから、鉄道中心ではなく、不動産や新規の成長産業などをに重きをおき、新設する子会社が鉄道事業を担うという。 そして、「“グレーターなんば”構想として、ターミナル駅の難波から新今宮、新世界へ続くエリアをもっとワクワクする街にしたいという思いで、新世界を関西のみならず、全国ナンバーワンのワクワクする街にしたい。各エリアを点ではなく面としてつなげたい」と話した。 来年・2025年は、通天閣観光が設立70周年、南海電鉄が創業140周年。新たな一歩を踏み出すメモリアルイヤーとなる。 ともに大阪・関西万博の先を見据え、関西観光の長期的な発展と経済波及効果を見込んでいる。
ラジオ関西