小倉智昭さんの死因膀胱がん 主な症状は血尿、頻尿、排尿痛、残尿感、切迫した尿意 浸潤型はかなり悪性
昨年12月、キャスターの小倉智昭さんが膀胱がんで亡くなられました。毎朝テレビで見ていた方でしたので、少なからず驚きでした。腎臓で作られた尿は、腎杯、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通って体外に排出されます。この尿の通り道を尿路といいます。尿路の内側は、ほとんどが尿路上皮という粘膜でおおわれています。 膀胱は一時的に尿をため、ある程度の量になったら体の外に出すための臓器で、膀胱がんは膀胱にできるがん種の総称です。膀胱がんの大部分は、膀胱の内部をおおう尿路上皮にできる尿路上皮がんです。尿路上皮がんは、がんが膀胱の壁にどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)によってステージ分類され、ステージ0~1は筋層非浸潤性(表層型)がん。それ以上のステージは筋層浸潤性(浸潤型)がんに分類されます。 膀胱がんの主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。ただ、最近よくある「過活動膀胱」という病気も、「切迫した尿意」が主症状です。過活動膀胱にはたくさんの治療薬がありますので、まずは泌尿器科で相談してください。 さて、がんの話に戻りますが、表層型の膀胱がんは膀胱鏡を入れて膀胱内の小さながんをひとつひとつ、切ったり焼いたりすることで治せます。また結核の予防薬であるBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療法も有効です。ただし、必ずと言っていいほど再発するので、定期的な膀胱鏡検査と、再発していればまた丁寧にがんを焼き取る治療を続けます。この検査と治療はずっと続くと思ってください。少しでも油断したり、受診を怠ると膀胱鏡では取りきれなくなりますので、検査と治療とは生涯、縁が切れないと言っても過言ではありません。 小倉さんの場合は発見された時点で浸潤型だったようで、この場合は膀胱を全摘出せねばなりません。実際に小倉さんもかなり悩んだ末に膀胱を摘出されたようです。しかし浸潤型は膀胱がんでもかなり悪性の部類で、発見された時には、周囲の臓器に浸潤していたり、リンパ節や他臓器への転移も多く見られます。長年の闘病の末に亡くなった小倉さんのご冥福をお祈りします。 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。