『ターミナルケア』に携わる介護職員たちが抱く”不安”と”恐怖”…介護職員自身も”ケア”する『フロア会議』の実態
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務めた筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第36回 『介護は「施設」と「入居者家族」の『共同作業』!…より適切な“ケア”をしてもらうために「重視すべきこと」』より続く
介護施設で行われる会議
サービス担当者会議のほかにも施設ごとにさまざまな会議がありますが、私のいた施設で行う主要な会議は次の2つでした。 ひとつは「主任会議」です。私たち職員は法的根拠と組織基盤の上で介護を行っていきます。そのために組織図に合わせて部署をつくり、部署別にリーダー(主任)を指名します。主任の仕事は、常に部署全体に目を配り、問題があれば見直し、自分の部下を育成することです。会社でいえば中間管理職に当たる、組織にとってきわめて重要な職務です。 主任会議は、各部署の主任がその仕事をひとりで抱え込まないように、施設全体で支え合うために、全主任が集まって行う会議です。
職員の思いをまとめる会議
もうひとつは「フロア会議」です。私たちの施設ではフロア(階)をひとつのユニットとして、食事や入浴などの日常生活がそのフロアでまかなえるような配置にしています。フロア会議は、同じフロアで働く職員――看護師・介護士・リハビリ担当・相談員・ケアマネジャー・栄養士その他が、新人もベテランも含めて一堂に集まる会議です。 仕事のやりにくさ、難しいお年寄りのケア、介護職ならではのつらさなどを率直に話し合って、一人ひとりの介護を伝え合います。 ターミナルケアは、ときに若い職員や経験の浅い者には、恐くて不安なこともあります。そういう気持ちを伝え合うことで、職員たちは互いに支え合い、乗り越えていきます。また、お年寄りが亡くなられた後、悲しい気持ちや、これでよかったのかなという迷いを言葉にして共有する場ともなります。 職員たちはこうした会議を通して問題点や悩みを共有し、組織としてひとつにまとまっていきます。この仲間づくりが、職員たちの成長の原動力なのです。 『息子の嫁「ずっと義母の介護をしてきたのに!」…「所詮は他人」と罵られて意見を“封殺”される『マイノリティ』たち』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)