京都の「ブラック・ジャック展」、来場者は平均2時間滞在!? 20代などの若年層客も多く
■ 公式Xのつぶやきで注目、京都会場限定の展示も
第一線で活躍する医療従事者らに影響を与え、多くの人に感銘を与え続ける医療マンガの金字塔『ブラック・ジャック』。連載50周年記念を迎え、『手塚治虫 ブラック・ジャック展』が「美術館「えき」KYOTO」(京都府京都市)で開催中だ。 【写真】来場者が立ち止まって読み込み…館内の様子 なんでも、同展公式Xが呟いた原稿内の「京都タワー・・・のような!?」が京都会場限定で見られるので、注目を集めているという。さらに、作品を観るのではなく、多くの来場者が「平均2時間熟読」するのだそう。一体どういうことなのか? 同展担当の三宅礼夏学芸員に伺った。 同作は「マンガの神様」手塚治虫氏の代表作のひとつ。顔に傷がある無免許の天才外科医ブラック・ジャック(間黒男)と彼が生み出した助手の18歳で0歳の女の子ピノコといった個性あふれるキャラクターが織りなす「人としての生き様」や「医者は何のためにあるのだ」といった医療に対する根本的な問いなど、骨太な内容が1話完結の形で描かれている。読んだことが無くてもブラック・ジャックの存在はご存じの方も多いだろう。 何度も実写化されてはいるが、実際に連載されていた時期が70~80年代の作品であるため、「当初、若い年代の方がどれくらい来てくださるか分からなかった」と三宅学芸員。しかし、いざ蓋を開けてみると、意外と20~30代の若い人、それも女性の来場者が結構多いので驚いたという。 全4章構成の展示のなかでも、生原稿を作品の主要テーマごとに展示した第3章は圧巻で、各話のあらすじとともに名台詞や名シーンが描かれた生原稿を真剣に読み込む人が続出している。そのため、どの人も平均2時間くらい会場内にいるのだ。
■ 「手塚は終わった」からの超復活劇
また、第2章のブラック・ジャック誕生秘話も興味深い。手塚氏が円熟期の頃の作品なので、人気絶頂で世に出た作品なのかと思いきや、真逆なのだ。当時は、『巨人の星』など劇画調マンガが台頭してきた時代。人気に陰りが出て、手塚氏の『虫プロダクション』は巨額の負債を抱えて倒産してしまう。 当時の担当編集者・岡本三司氏は、展示動画内で「手塚は終わった。死に水を取ってやろうじゃないか、との気持ちで連載をオファーした」と語っている。いつ打ち切られるかわからなかったので、1話完結の形になったのだ。 手塚氏は大阪生まれで兵庫県宝塚市育ち、大阪大学附属医学専門部を卒業した医学博士でもある。三宅学芸員は、「自身の一番の強みである“医療”で最後の勝負に出たのだと思います。監修者も不要で週刊で連載できたのは、手塚先生ご本人が医学博士だったからこそ」と説明。これがヒットし、多くのファンによって50年も読み続けられる不朽の名作となったのだから胸が熱くなる。