賛否両論の町田ゼルビアらしさはロングスローだけでない…「実に見事」浦和DFマリウスが称える強みと“帰宅難民になりがち”ホームの魅力
今季J1で最も異彩を放っているのは、町田ゼルビアだろう。黒田剛監督が指揮するチームはロングスローやフィジカル重視のスタイルを打ち出し、賛否両論を呼ぶことも多い。その異色ぶりはアクセスが限られるホームスタジアムなどピッチ外も含めてのもので、独特の魅力をホーム戦取材で感じ取った。 【撮影写真】「陸の孤島…帰宅難民になる…なぜ武器・防具屋があるの…」立地がエグいゼルビア本拠地には何がある?フィジカル+ロングスローでゴリゴリな戦い方も全部見る 今季のJ1で、地球規模でもほぼ前例のない偉業が果たされるかもしれない。 第17節を終えたリーグで首位の座を維持している町田ゼルビアが、もし最終的に頂点に立てば、フットボールの世界史にその名が刻まれることになる。
初昇格→初優勝は欧州主要リーグでも超異例
まだシーズンの半分も消化していないなか、気の早い話ではある。とはいえ、前半戦の終盤にトップを走っていることだけでも、特筆に値する。 なにしろ、下部リーグから初昇格してきたばかりのチームが優勝したケースは、欧州主要リーグでも1961-62シーズンのイプスウィッチ・タウン(イングランド)だけなのだ。1998年にブンデスリーガを制したカイザースラウテルン、1978年にイングランド1部リーグで優勝したノッティンガム・フォレスト、1932年に同じことをしたエバートンは、いずれもその前に1部リーグに在籍していたことがある。 国内では、2011年に柏レイソル、2014年にガンバ大阪が、昇格1年目にJ1を制覇しているものの、いずれも以前にJ1を経験していた。韓国のKリーグでは、2013年に2部制になってから、昇格チームが優勝したケースは1度もない。アメリカのMLSでは、シカゴ・ファイアーがリーグに加盟した1998年にリーグとカップの2冠を果たしているが、あくまで新規参入という形だった(MLSは昇降格のない1部制)。 あるいはもっとマイナーなリーグはその限りではないかもしれないが、少なくともJリーグと同等か上と思われるリーグで、初昇格、即優勝した事例は確認できなかった。
浦和DFマリウスが「実に見事」と称賛したワケ
町田は前節、国内随一の威容を誇る浦和レッズの本拠地で、終了間際に勝ち越し点を奪い、劇的な2-1の勝利を収めた。後半アディショナルタイムに下田北斗がPKを決めると、まるで決勝戦に勝ったかのように全員で喜びを爆発させていた。 この5月26日は黒田剛監督の誕生日。自身の記念日を白星で祝った指揮官は試合後、次のように話している。 「相手の圧倒的なサポーターのパワーが(浦和の)選手たちに乗り移り、それに屈することがあれば、ひとたまりもないので、選手たちを奮い立たせて臨みました。(中略)前半からボールを持たれる時間は長かったですが、しっかりと帰陣して、ゴール前のセンターを空けず、クロスへの対応もパーフェクトにやってくれました。勝ち急がず、取り急がず、チャンスが来たら一気に畳み掛けていこう、粘れば、最後には必ず良いことがあると選手たちに伝えていました」 勝負強さ──。今季前半戦の主役を担っているチームについては、各所ですでに多くの分析がなされているが、間違いなく、勝ち負けへの徹底したこだわりが強さの所以のひとつだろう。浦和のCBマリウス・ホイブラーテンはニュアンスを変えて、町田の強みをこう表現した。 「フィジカルが強く、ロングボールを多用し、セットプレーが脅威。町田のスタイルはわかっていたけど、やられてしまった。悔しいよ。ただ初めて対戦して感じたのは、町田の選手は全員がチームのために最後まで走り抜き、戦い抜くこと。それは実に見事なものだった」
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