これほどまでに温かいドラマがあっただろうか…『放課後カルテ』 最終話で思わず頬を緩めたシーンとは? 考察レビュー
松下洸平主演のドラマ『放課後カルテ』(日本テレビ系)が完結を迎えた。本作は、小学校に赴任した口も態度も悪い小児科医が、類稀なる観察眼で児童の異変に気付き、未来へ向かう子どもたちの背中を押す保険室ヒューマンドラマ。今回は最終話のレビューをお届けする。(文·まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】松下洸平の表情に思わず頬が緩む…貴重な未公開カットはこちら。ドラマ『放課後カルテ』劇中カット一覧
『放課後カルテ』が視聴者に届けた熱意
これほどまでに温かいドラマがあっただろうか。 『放課後カルテ』(日本テレビ系)はドラマでありながら、ずっと嘘がなかった。 小学校の保健室が舞台となった作品で、子供たちの病気が丁寧に描かれる。睡眠障害から気胸、精神疾患、さらには場面緘黙まであり、小学生が抱えている症状というのも相まって、なかなか見るのが辛い側面もあった。しかし、制作側は決してこれらの説明を軽んじることはなかった。 第2話では冴島啓(岡本望来)のAED使用のシーンを長回しで使い、6年2組の生徒・水本羽菜(小西希帆)の精神疾患に関しても4、5話を通して扱われている。いずれも多くの人に情報が届いてほしいという熱意が伝わってきた。 さらに、印象的だったのが症状の経過。『放課後カルテ』は医師や患者が登場するので、一応は「医療ドラマ」(学園ドラマの側面も強いが)とカテゴライズすることもできるかもしれない。しかし、多くの医療ドラマのように「病気が治って、はい解決」とはならない。
リアルな現場と向き合い続けてきた牧野(松下洸平)
睡眠障害や場面緘黙などは当然すぐには治らない。長く付き合いながら向き合っていく必要があり、快方に向かうかは本人と周りのサポート次第だ。最終話で登場した、過去の患者・真琴(三浦綺羅)にしても、「胸の痛み」を抱えている。 すぐには原因がわからない症状で、彼と家族の関係性を考えてメッセージを送ることで、少しずつ前を向かせることに成功した。ただ、誤解を恐れずに言えば、まだ真琴は普通に学校へ行くことができるようになったというスタートラインに立っただけ。母親のいない中、どのような学校生活を送っていくかはあくまでも視聴者の想像に委ねられている。 そんなリアルな現場と向き合い続けてきたのが小児科医の牧野(松下洸平)。口も態度もでかい牧野は、第1話で「保健室にはなるべく来ないでもらいたい」と児童たちに言い放つ。もちろん、それは子供たちに健康でいてほしいという気持ちの裏返し。 最初は子供たちに恐れられてしまうが、嘘のない牧野に対して徐々に児童も心を開いていく。その過程は一切の無理がなく描かれており、確かに子供を子供扱いせず、これだけまっすぐに寄り添ってくれたら、子供たちも懐いていくんだろうなと思わされる。 だから、小学校を卒業したばかりの、彼らが再び小学校の保健室を訪れて牧野と再会する場面にも思わず頬を緩めてしまう。卒業式の日に人知れず先に学校を後にしていた牧野と児童たちがしっかりと再び顔を合わせるシーンは、どちらかというとドラマっぽい演出だが、それだけ牧野が子供たちから慕われていたと示すには十分すぎるものだった。