3930万円から味わえる世界は強烈!!! 新型マクラーレン750Sの走りは意外なほど……だった!!!
マクラーレンの名に相応しいロードカー
まずはスパイダーに乗って周囲の一般道を走る。 ルーフが開くスパイダーでもボディの頼りなさを感じないのは、カーボンモノコックを全モデルに採用するマクラーレンの特徴。今回はクーペよりも前にスパイダーを試乗したが、ボディはガッシリとしていて安心感が強い。当然、ハンドリングも正確で意のままに操れる。 マクラーレンの伝統である乗り心地のよさも健在。それどころか720Sよりも足まわりの動き方はむしろしなやかになって、快適性は増したように思ったくらいである。 さらにエンジン音は音量がこれまでよりもやや小さくなったいっぽうで、音質的には低音域を抑えて高音が強調された方向へと変更。野太くて迫力ある音から、澄んだ抜けのいい音を響かせるようになった。少し未来的で、精密なメカニズムが運動していることを連想させるいい音だ。 エンジンパワーの30psアップは明確には感じられなかったけれど、最終減速比がこれまでよりも15%下げられたためエンジンのピックアップが向上したことは実感できた。とりわけ高回転域でのパワーの高まりは、純粋な刺激感というよりも少し恐怖を覚えるくらいの迫力がある。 続いてクーペに乗り換える。予想どおりというべきか、道が混雑していたせいもあって、スパイダー版との違いはほとんど感じられない。はっきりとした違いは、ルーフを開けることによる開放感が手に入らない点と、スパイダーにのみ用意される小さなリヤウインドウを開けたとき、エンジン音がほどよい音量で、しかもダイレクトに聞こえるようになるくらいだろう。 最後にサーキット試乗を行ったが、これは圧巻というほかなかった。どんな速度域からどれほど激しくブレーキペダルを踏み込んでも車両は安定した姿勢を保ち続けるほか、コーナリングで多少頑張った程度ではタイヤのグリップが失われる予兆さえ認められなかった。サーキットでの性能をより重視したピレリの「PゼロトロフェオR」というタイヤを履いていたのも関係していたはずだ(公道試乗は通常のピレリPゼロを使用)。 いずれにせよ、ドライバーは圧倒的なスタビリティに支えられながら強烈なペースでサーキットを走った印象は、レーシングカーを操っているときの感覚に近いものがあった。優れた快適性と、レーシングカーに匹敵する圧倒的なパフォーマンス。このふたつを両立させてこそ、マクラーレンの名に相応しいロードカーと言えるのだろう。 私は、「BENCHMARK. BEATEN. 」が果たされたことを確信した。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)