「バスが無くなったら、病院には、よう行かん」 地域から姿消す公共交通 福知山市長選を前に・中
■通学・通勤に若者も困惑
若い世代も困惑している。与謝野町から通学で利用している京都共栄学園高校2年の男子生徒は、自宅近くのバス停から福知山線に乗り、共栄高校前まで乗車する。平日のみの運行のため、土曜日に授業がある場合は、自宅から車で5分ほどの京都丹後鉄道の駅から乗車し、福知山駅で下車する。到着時間の関係でバスの場合は始業時間に余裕を持って登校できるが、鉄道の場合は福知山駅から早歩きで学校へ向かわないと間に合わない心配がある。 「当たり前にあると思っていたので、バスが無くなることに実感がない。受験の年に環境が変わるのでつらいです」 勅使のカフェレストラン&ベーカリー・あまづキッチンで働く女性(26)は、体が不自由で知的障害がある。市街地から通っており、「障害があっても公共のバスを使って仕事に行けることが喜びです。電車だったら、駅の階段を上るのが大変。バスの運休日は、親の送迎やタクシーを使ったりしていますが、無くなると困るのでバスを残してほしい」と切実だ。
■事業者も悲痛な声
地域の公共交通を担う路線バスを巡っては、運転手の労働時間の規制が強化される「2024年問題」を受け、過疎地、都市部に限らず日本全国で減便、路線廃止が相次いでいる。 2月と5月に開かれた福知山市地域公共交通会議。丹海バスを運行する丹後海陸交通(本社・与謝野町)の担当者は、減便・廃止の理由について運転手不足を挙げ、退職意向者に短時間勤務での依頼をして会社に残ってもらうなど運転手確保に努めたが、抜本的な解決の見込みは厳しいとの見解を示し、減便・廃線への理解を求めた。 出席していた近畿運輸局京都運輸支局輸送・監査部門の首席運輸企画専門官は「『バスを利用しさえすれば地域公共交通を維持できる』という次元の話ではなく、(終業時間から次の始業時間まで最低でも11時間の休息時間を確保する)勤務間インターバル制度などバスの運行維持ができないような状況が、かなり深刻になっている」と現状を説明。「一朝一夕では解決できない。仮の話として、『もしバスが無くなったらどうするか』をそのときが来たときに考えるのではなく、『無くなったらどうしたらいいか』を日ごろから少しずつ考えていくことが非常に大事だ」と投げかけた。 市内には自主運行バスや交通空白地有償運送事業などがある。今ある交通手段の維持や、新たに出てくる交通空白地での対策が急務となっている。