「バスが無くなったら、病院には、よう行かん」 地域から姿消す公共交通 福知山市長選を前に・中
任期満了に伴う京都府福知山市長選挙は6月2日に告示され、現職と新人2人の三つどもえの争いになるとみられる。人口減少による生活環境の変化、コロナ禍後の地域活性化、農林業や経済の振興、老朽化したインフラの整備など、福知山市が抱える課題が山積する中、まちづくりのリーダーに誰を選ぶのか。人口減少▽公共交通▽観光振興の3課題を追った。
「バスが無くなったら、病院には、よう行かん」-。福知山市北端の北陵地域と市街地を結ぶ路線バス・丹海バスの福知山線が廃止されることが発表され、地域で暮らす80代の女性は肩を落とす。 福知山線は平日の朝、昼、夕の往復6便運行。しかし今年2月、運行会社が6月から昼の2便を減便して往復4便にし、来年3月末をもって路線を廃止する方針を公表した。 女性は、3カ月に一度、市立福知山市民病院へ行くために丹海バスを利用。朝の便で病院へ通い、診察が終われば周囲を歩き、昼の便で帰宅する。 「(減便される6月以降は)診察が終わってから夕方までどこで何をしたらいいのか。歩き回るのもくたびれる」と不安を口にし、廃止されると診察も諦めざるを得ないと考えている。 一方、地域では2022年12月から北陵地域振興協議会が、市街地と結ぶ「乗り合いタクシー」の実証実験に取り組んでいる。市内のタクシー運行事業者と協力し、事前予約制で毎週金曜日に走らせ、要望があれば平日なら別の曜日でも構わない。発着点や発車時間が決まっているなどの条件はあるものの、利用料金は市の補助を活用して、通常のタクシーと比べるとかなり安価に抑えられている。 住民の高齢化が進む中、生活に欠かせない交通手段の確保のためだが、昨年4月から今年3月末までの利用者は延べ42人と想定より少ない。地域振興協議会の事務局長(60)によると、「タクシーに一人で乗るには気が引ける」といった意見が聞かれるという。「車や運転免許証を持たない高齢世代の人が地域にたくさんおられますが、タクシーを使うことはハードルが高いようです。利用者が増えるようにするためには、意識改革をしないといけない」という。