サム・アルトマン氏の暗号資産プロジェクト・ワールドコイン、イーサリアムレイヤー2を今夏ローンチ予定
ユーザーベースのさらなる拡大
今日のワールドコインの体験は、主にワールドアプリ(World App)と呼ばれるウォレットの中で完結する。ワールドアプリは、複数の人気プロトコルと連携しており、オーブでのスキャンを終えたユーザーには特別機能を提供している。現在ワールドアプリは、OPスタックを生み出したイーサリアムレイヤー2「OPチェーン(OP Chain)」に接続されている。 ワールドコインはOPチェーン上のプロトコルの中で2番目のトランザクション量を誇り、ワールドコインのトークンWLDの時価総額はイーサリアム(ETH)とネイティブトークンのOPを除くと、OPチェーン最大だ。 ワールドコインが独自のブロックチェーンに移行することで、「現在の規模でユーザーを獲得し続けることができる」とサダ氏は述べる。 「既存のユーザーには、トランザクションの実行がより速く、安くなるというメリットがある」 当初ワールドコインは、ユニバーサル・ベーシック・インカムの実現を謳っており、特定の地域(米国と他のいくつかの国を除く)で網膜をスキャンした人には、WLDトークンと、認証されたワールドIDアカウントが付与された。しかし時を経て、AIがインターネットを再構築し始めたことで、ワールドコインの金融的な野心は、デジタルIDに関するより広範な目標の陰に隠れつつある。 独自のブロックチェーン構築を目指すうえで、ボット審査はワールドコインの中核的なアイディアとなった。将来的にはワールドアプリ以外のウォレットアプリもワールドIDを活用できるようになる。またワールドチェーンは、WLDをETHと並ぶ通貨と捉え、両資産がネットワーク手数料の支払いに使えるようになる。
批判を糧に成長
2021年のデビュー直後から批判にさらされたワールドコインの波乱の1年を経て、ワールドチェーンのアイディアは生まれた。一部の暗号資産信奉者からは、プライバシーに関する懸念が表明された。眼球をスキャンするオーブには不気味な要素があることから、ワールドコインは生体データを厳密に暗号化すると主張したにもかかわらず、懸念を払拭するのに苦労した。 また『MITテクノロジー・レビュー(MIT Technology Review)』は、ツールズ・フォー・ヒューマニティが、テスト運用時にサインアップと引き換えに無料のトークンをちらつかせ、貧しいコミュニティの人々を実質的に搾取していたとする、不名誉な暴露記事を掲載した。その記事によると、ワールドコインは「欺瞞的なマーケティング活動を行い、ユーザーに明示したよりも多くの個人データを収集しており、十分な説明をした上での同意をユーザーから得ていない」という。 AIがブームとなり、暗号市場が上昇傾向にある中、ワールドコインのチームは一連のアップデートを実施し、他サービスとの連携を広めてきた。ワールドコインは眼球をスキャンせずとも使えるようになり、プロジェクト開始以来悩まされてきたプライバシーに関する懸念を解消するための新しい暗号化技術も生まれた。 このような改善により、ワールドコインは多くの否定的な意見にもかかわらず成長し、最新データによれば総トランザクション数は7000万件を超えた。ブログにワールドコインの詳細な批判を掲載していた、イーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏でさえ、3月にXのポストで「プライバシー批判を真摯に受け止め、保有データを最小限にするようシステムを設計したことは、非常にすばらしい」とワールドコインを称賛している。 |翻訳・編集:行武 温|画像:Worldcoin's iris-scanning technology is being questioned by regulators (Danny Nelson/CoinDesk)|原文:Worldcoin, Sam Altman's Crypto Project, Is Building a Layer-2 Chain
CoinDesk Japan 編集部