サム・アルトマン氏の暗号資産プロジェクト・ワールドコイン、イーサリアムレイヤー2を今夏ローンチ予定
オープンAI(OpenAI)の創設者サム・アルトマン(Sam Altman)氏が手がけ、網膜スキャンで話題になった暗号資産スタートアップ、ワールドコイン(Worldcoin)は、現在独自のブロックチェーンを構築している。 今夏リリース予定のイーサリアムレイヤー2ネットワーク「ワールドチェーン(World Chain)」では、眼球をスキャンし、「ワールドID(World ID)」と呼ばれるデジタルパスポートを手に入れたユーザーには優遇措置がとられる。ワールドチェーンの根底には、ワールドコインのローンチ当初からの旗印である「認証済みの人間」のためのネットワーク、換言すれば、ますます不気味さを増すAI時代にボットを排除するように設計されたエコシステムというアイディアがある。
人間のためのブロックチェーン
これまでワールドコインのワールドIDプロトコルは、単に分散型アプリケーション、つまりはイーサリアム上の一連のスマートコントラクトとして運営されてきた。しかし独立したブロックチェーンの構築に舵を切ることで、開発者はより大きなコントロールと多くの選択肢を手に入れ、ユーザー手数料は減少する可能性がある。 「認証済みの人間のユーザーには、ボットよりも優先的にブロックスペースが割り当てられ、一部のガス(手数料)も無料になる」と、ワールドコインの開発チームであるツールズ・フォー・ヒューマニティ(Tools For Humanity)は声明で述べた。 「開発者にとって、ワールドチェーンは実用性に焦点を当てたアプリを何百万人ものユーザーに届けられる場となるだろう」 ワールドチェーンは、独自ブロックチェーンの構築を目指すプロジェクトに人気の開発ツール「OPスタック」で開発される。コインベース(Coinbase)がBaseの構築に活用したのもOPスタックだった。「ロールアップ」と呼ばれる他のレイヤー2と同様に、ワールドチェーンはユーザーのトランザクションを束ねてからイーサリアムに記録する。これにより、直接イーサリアムにすべてのトランザクションを記録するよりも手数料が安くなる。 「ロールアップはすべて、アクセス性向上を目指してガスの引き下げに多くの労力を費やしているが、それが実現すればボットの活動も増加してしまう」と、ツールズ・フォー・ヒューマニティの製品・エンジニアリング・デザイン責任者ティアゴ・サダ(Tiago Sada)氏は語る。 「その結果、人間のユーザーが支払う手数料が超高額になり、送金詰まりが起きてしまう」 「オンチェーントランザクションの50~90%が自動化されていることは明らかだ」とサダ氏は説明する。 「ワールドチェーンはオープンでパーミッションレスなネットワークになるため、ボットを含め、誰でもトランザクションを実行できる。しかし、認証済みの人間によるトランザクションには優先的にブロックスペースが確保されるため、より速く処理されることになる」 ワールドコインの名声(見方によっては悪名)を支えているのが、ボーリングボールのようなクロームの球体で、眼球をスキャンするレンズが入ったデバイス「オーブ(Orb)」だ。オーブは、アカウント取得者がロボットではなく人間であることを保証し、同一人物が2つのアカウントを所有する可能性を排除することで、ワールドコインを他のインターネットサービスと差別化している。 「人間であることの証明」を重視するプロジェクトの姿勢は、AIアプリケーションの普及によって生まれる潜在的なユースケースと結びついている。 ツールズ・フォー・ヒューマニティは、カンファレンスやイベント、ポップアップショップなどにオーブを持ち込み、対面スキャンを実施してきた。ワールドコインによると、すでに167ヶ国以上で1000万人以上のユーザーがネットワークに参加しているという。