「車好きの聖地」をどうするつもりなのか…大黒PAに「閉鎖命令」を出すことしかできない首都高と警察の無策
■スカイラインGT-Rは神格化された存在 JDMの人気は、映画『ワイルド・スピード』シリーズや日本製スポーツカーが多数登場するレースゲームの人気にも重なっている。 JDM人気が一気に拡大したのは、1989年に発売された日産スカイラインR32GT-Rが2014年に25年ルール適用で輸入解禁となったことだ。スカイラインGT-R(R32/33/34)は一度も正規で海外輸出されたことがなく、北米のJDMファンにとっては神格化された存在といっていいだろう。R32に続いてR33は2020年に、R34は2024年に解禁となった。それに合わせてスカイラインGT-Rの限定車には億を超える価格で取引される個体も存在する。 米国だけではなく今や世界中で、スカイラインに限らず80年代~2000年初頭までの日本製スポーツカーが絶大な人気を誇っている。それらがたくさん集まる場所……ということでSNSなどを介して海外の車好きの間でも大黒PAが有名となり、コロナ禍以前から大黒PAに多数の外国人が集まるようになった。 ■BBCの自動車番組も大規模ロケ 英国BBCなど海外の大手テレビ局も、何度か大黒PAで大規模なロケを行っている。2017年11月にはBBCの有名な自動車番組「トップギア」が100名以上のクルーを引き連れて大黒PAを拠点に数日間にわたってJDMを撮影していた。 取材許可を取っているのか首都高広報課に確認したが、どうやらこのロケは無許可で行われたらしい。 大黒PAに集まるのは日本車だけではない。フェラーリやランボルギーニ、ポルシェ……滅多にみることができないスーパーカーも間近に見ることができる。「日本に行くなら一度は大黒PAに行ってみたい!」と思う外国人が急増するのも無理はないだろう。
■塀をよじ登る、首都高上を歩く人が登場 大黒PAは原則として車以外の交通手段で訪れることはできない。タクシースタンドもバス停もない。多くは外国人向けの大黒PAツアー(おそらく未認可?)を利用するか、外国人でも貸してくれるレンタカーを使って自ら運転していくか、ということになる。 中にはタクシーで大黒PAの近く(一般道)まで来て、高い塀をよじ登って入る外客もいる。逆に何とかタクシーで大黒PAに来たものの帰りの足がない(タクシーを呼べない)ということで首都高上を歩いて非常口から出ようとする外客も存在する。 いずれも禁止行為であり非常に危険だ。そこで2023年に首都高は禁止行為をしてまで侵入しようとする外国人に向けて警告動画を出した。 今はどうなっているのか? 「現在も歩道から塀を乗り越えてPA内へ入ってくる事象は発生しております。違法行為を見つけた際は、警備員による口頭での厳重注意や警察への引き渡しを行っております。」(首都高広報課) ■なんとしてでもドリフトを見たい輩たち もう一つ、外客絡みのトラブルといえば「ドリフト見物」である。これは大黒橋通りで夜な夜な行われるドリフト走行を見る行為である。こちらも、大黒PAを訪れる外客が増えてから悪質行為が増加した印象がある。かつて美しい夜景が望めた展望エリアは、近年、違法ドリフト走行を見物できる場所として人気を集めるようになってしまった。 ごくまれに通報を受けた鶴見警察署のパトカーが出向くこともあるが、動画などを見ていると警察はドリフト族から完全に舐められている雰囲気だ。大黒ふ頭内には一般の民家が存在せず、苦情が入りにくいという事情もあるのか。取り締まりがまったく追い付いていないようだ。 対策としてまずは昨年12月にブロック塀の上にフェンスが設置されたが、すぐにブロック塀の上に立ってみる人が続出。その後、コーンやテープで囲って立入禁止としたが、これも即刻突破し見物人が集まるように。ついには階段自体を大がかりに封鎖して2階の広場に上がれないようにしたが、それでもまだ横の隙間などから上がる輩が現れた。 結局、階段そのものの封鎖はやめて、再びフェンス周りをブロックしたのだが、ここもまたすぐさま突破されてなんと、屋根に上がって見る輩が多数登場したのだ。