「絶対に言っちゃダメ!」マカロニえんぴつプロデューサーがメンバーに戒めたこととは? 公式ノンフィクションノベルを著者が語る
■音楽業界を志している人に何かを与えられたら
──江森さんご自身も、この本を書くことによって改めて気づいたこと、わかったこともあるのでは? 江森:たくさんあります。まず思うのは、出版のプロはすごいなということ。最初に言ったようにファンクラブ向けのコンテンツとして書き始めたんですけど、編集者のおかげでちゃんとパッケージされて商品になりました。あと「自分って言葉を知らないんだな」と思い知らされました(笑)。 ──書き手としての気づきですね。 江森:マカロニえんぴつに関して言えば、メンバーに出会ったときは僕自身30代前半だったんですよ。自分も若かったし、酒も付き合えたから密度が高かったんです。今はスタッフも増えたし、コロナ以降は飲みに行くことも少なくなって。僕自身もレーベル全体のことを見るようになって、マカロニえんぴつとの向き合い方が変化しています。ジャッジするのは今も僕なんですが、自分のなかで「付け焼刃でやってないか?」という反省もありました。たとえばこの本が世の中に受け入れられて、「第2弾を出しましょう」ということになったら、エピソードが薄くなっていく気がしますよね。「この先、ドラマティックなことがあるかな?」「先細りにならないかな」みたいな心配もあるし、この先のサクセスストーリーを盛り上げるというか、もっといろいろ考えないとダメだなと。 ──期待してます! 音楽業界を目指す人にとっても、刺激を得られる本だと思います。 江森:そうなったらうれしいですね。ここ数年、音楽業界を目指す若い人が減っているような印象もあるんです。専門学校や音楽大学で講師をやらせてもらうこともあるんですけど、熱量のある学生はいるし、憧れだけで終わらず、がんばってほしいなと思っていて。この業界でやれることって、無限だと思ってるんです。バンドのマネージャーというと、「スケジュール管理して、メンバーを車で送り届けて」みたいなイメージがあるかもしれないけど、そういうイメージとは全然違います。音楽に限らず、たとえばお笑いの世界でも「あの人がマネージメントしたから成功した」という例がたくさんある。バンドのマネージメントでも、楽曲制作やライブだけではなくて、映像やSNSでの仕掛けだったり、やれることはめちゃくちゃあるんですよ。10周年を記念したショートムービー(「あこがれ」)は制作会社のAOI Pro.と組んで制作したんですけど、はっとりの父親役でリリー・フランキーさんが出てくれて、やってよかったなと思ってます。 ──クリエイティブな仕事ですよね。 江森:そうですね。アーティストを知ってもらうため、世の中に広がるきっかけを作るのが仕事ですけど、ルールは何もありません。『青春と一緒』もそうで、僕が本を出すことで、ラジオのMCの方が「そういえばマカロニえんぴつのマネージメントをやってる江森さんが本を出すそうです」とか宣伝してくれるんですよ。バンドが動いていない谷間の時期のプロモーションとして、最高じゃないですか。僕のなかでは映像化までイメージしているんですよ。大根仁さんが監督した『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』もそうですけど、裏方を主人公にした映画とか……。まあ、僕が勝手に考えてるだけですけど(笑)。 *** 江森弘和(えもり・ひろかず)プロフィール 『マカロニえんぴつ』が所属するレーベル『TALTO』代表で、プロデューサー兼チーフマネージャー。彼らを発掘し、そしてはっとりを筆頭としたメンバーとともに歩んできた存在。 [文]双葉社 森朋之 協力:双葉社 COLORFUL Book Bang編集部 新潮社
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