「絶対に言っちゃダメ!」マカロニえんぴつプロデューサーがメンバーに戒めたこととは? 公式ノンフィクションノベルを著者が語る
■サティが抜けて、マカロニえんぴつが本当の意味で“バンド”になった
──メンバーと向き合い、少しずつバンドの活動規模が大きくなるなかで、江森さんのスタンスや考え方が変化する。その過程も、この本の読みどころだと思います。 江森:確かに向き合い方は変わってきました。ワンオペで回しているときと、スタッフがいるときでも違いますし。メンバー間のバランスも変わってきますからね。はっとりが完全にイニシアティブを取ってる状態から、少しずつ(曲作りやアレンジの)パーセンテージも変わってきて、僕の向き合い方からも自然と変化するというか。 こういう言い方が合ってるかわからないんですけど、“正解”を僕が言いすぎるのもよくないんです。大きな傷にならなければ、「ここは失敗させる時期だな」ということもあって。たとえば、スタッフが持ってきた案件をメンバーが「これはやりたくない」と言うとするじゃないですか。数字を示して、理路整然と説明して説得することはできるんだけど、もしかしたら「無理にやらされた」と感じるかもしれない。だったらメンバーの意見を受け入れて、その結果を見せることで「やったほうがよかった」と気付かせるほうがいいだろうなと。こちらから「やったほうがいい」と言うにしても、タイミングを見定める必要があって。僕以外の人に伝えてもらったほうがいい場合もあるし、そのあたりはかなり繊細にやっています。 ──『青春と一緒』のなかには、はっとりさんがステージで「今日のライブはダメです」と言ってしまったことに対して、「絶対に言っちゃダメだ」と諭す場面もありますね。 江森:高松のライブですね。新人だった頃は、ちょっと卑屈になることがあったんです。東京で1000人クラスのライブをやっていても、地方では苦戦することもあるし、「車で移動して、体がバキバキ」とか「乾燥していて声の調子が良くない」ということもある。機材だってあるし、ソールドアウトしても赤字なんだから、新幹線で移動なんてできないですからね。そのなかでライブをやるのは確かに大変だけど、お客さんには関係ない。その日にしか来れないファンもいるわけで、ステージの上で「今日は良くなかった」なんて言っちゃダメなんですよ。調子が良くても悪くても、プロとして、その日だけの生のライブをやらなくちゃいけない。