戦後最低の投票率 統一地方選でわかったこと 内山融・東京大学大学院教授
一方、今回の統一選では変化を予感させる出来事もあった。道府県議選や市議選での女性当選者が多かったことである。41道府県議選では女性当選者数が全当選者に占める比率が9.1%となり、295市議選では女性当選者比率は16・1%であった。これらはいずれも過去最高の数字である。これまで「男の世界」であると考えられがちだった政治の場に多くの女性が参入することは、一面的ではない多様な考え方を取り入れるという点で大きな意義がある。政治における「多様性」(ダイバーシティ)が重要なのである。性別だけでなく、年齢その他のさまざまな属性・志向においても、多様性を確保していくことが政治の活性化の鍵となろう。 ところで、今回は、インターネット選挙運動が2013年に解禁されてから初めての統一地方選であった。ブログ、SNS、動画共有サービスなどで選挙運動を行うことができるようになったので、目にした人もいるだろう。しかし、ネット選挙は今ひとつ盛り上がりに欠けるという印象もあったのではないだろうか。 本来ネット選挙は、資金力や組織力が不十分な候補者にもハンディキャップ克服の道を与えうるものである。そのためこれからは、ネットを有効利用する方策に知恵を絞るべきである。今のところ選挙でのネット利用には演説会の案内のようなものが多いように見受けられるが、ネットを通じて実質的な政策論議ができるようなると、ネット選挙の意義も高まるのではないだろうか。 ---------------------- 内山 融(うちやま ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。